連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第55話「こんにちは赤ちゃん」

水木家

居間

浦木「う~ん 煮しめは やっぱり田舎風味が一番! 奥さ~ん うまいですよ。」

布美枝「ああ だんだん。」

浦木「おつ 懐かしい田舎言葉の響き。」

茂「お前は こげな時だけ どこからともなく現れるな。」

浦木「俺が 中森さんを紹介したんだ。 最後まで見届ける 責任があるけんな。」

茂「途中が 全部 抜けとるぞ。」

浦木「あれ? 前より 料理が減りましたね。 おい お前 奥さんに 所帯の苦労させとるんだろう。」

茂「うるさいなあ。」

浦木「性懲りもなく 富田のおやじと 仕事しとるそうだが 用心せんと また 痛い目みるぞ。」

茂「分かっちょ~わ!」

戌井「いや~ 富田書房だけじゃないですよ。 貸本漫画業界全体が ますます 冷えきってます。」

中森「昔は よかったな~。 私だって 3年前くらいは 貸本漫画の原稿料で ステレオ 買ったんですから。」

一同「ステレオ?!」

中森「それが 今じゃあ 汽車賃さえ ございません。」

浦木「家財道具 売り払って 都落ちか…。 人間 落ち目には なりたくないもんだ。」

茂「おいっ!」

戌井「分かりますよ。 僕も子供がいますから。 貸本漫画の稼ぎで 妻子を養うのは そりゃもう 至難の業です。」

布美枝「あっ!」

一同「あ~あ!」

戌井「大丈夫ですか?」

布美枝「あ ごめんなさい 私…。」

浦木「戌井さんよ~ 貸本漫画なんてもんは とっくに 時代遅れなんだよ。 漫画雑誌に 拾ってもらうか それが 無理なら 商売替えでも するんだな。」

戌井「でも 貸本漫画には 雑誌にはない自由な表現世界があります。 水木さんのような独創性が 大手 雑誌にはない 新しい漫画を 生み出すんですよ。」

浦木「青いねぇ あんた。」

戌井「何がですか?」

浦木「理想を並べても 版元が 全部つぶれたら 描き手も共倒れじゃないの~? つぶしのきかん 漫画家の末路は 哀れなもんだぜ。」

茂「おい イタチ!」

戌井「僕は 自分で出版社を興してでも 貸本漫画を守ります。」

浦木「そう 力むなよ 無駄に腹が減るぞ。」

戌井「あんた さっきから失礼だな。」

茂「そういう お前は何しとるんだ。 また 怪しげな もうけ話で 人を だましとるのか?」

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