連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第57話「こんにちは赤ちゃん」

塚本家

居間

暁子「ゆっくり テレビでも 見とったらええのに。」

布美枝「何かしとる方がええのよ。 のんびりしとったら落ち着かんわ。」

暁子「貧乏性だね。」

布美枝「ほんと。」

暁子「そろそろ 出かけようか?」

布美枝「うん…。 けど…。」

暁子「電報 とっくに 家についとるよねえ。 村井さん 電話の1本も かけてきたらええのに。」

布美枝「(ため息) 私がおらんでも 困らんのよ。 1人でやってきた人だけん 本音のところは 家族がおらんでも ええと思っとるんだわ。 だけん 先の事も考えんし 子供の事だって…。」

暁子「え? …何かあったの?」

布美枝「え…。」

暁子「懲らしめてやろうだなんて 本当は 思っとらんのでしょう。 他に 訳があるんじゃないの?」

布美枝「1人で… 考えてみようと思って。 先の事とか… いろいろ。 暮らしていくのに 精一杯で 今まで 先の事なんて 何も 考えとらんだったけど… ずっと このままでは いけんわ。」

暁子「フミちゃん 疲れとるのよ。 少し 羽伸ばしたら ええよ。 それぐらいしても 罰は当たらんわ。」

布美枝「アキ姉ちゃん…。」

暁子「遠慮せんで ここに おったらええよ。」

布美枝「だんだん。 あのな 姉ちゃん…。 実は 私…。」

(電話の呼び鈴)

暁子「塚本でございます。 あら 林さん? PTAの事で? うん。 …ん? 分かった。 …うん。」

布美枝「心配しとらんのだろうか…。」

回想

茂「子供は 大変だぞ。」

回想終了

(玄関の呼び鈴)

暁子「あら 誰かしら? フミちゃん 出てくれる?」

布美枝「うん。」

玄関

布美枝「は~い。 あなた…!」

茂「おっ!」

暁子「あら 村井さん…。」

茂「どうも お世話になりまして。 これ 土産です。」

暁子「まあ… バナナ。」

茂「おい 帰ろう。」

暁子「村井さん あのね…。」

茂「帰るぞ。」

公園

布美枝「勝手な事して すんません。」

茂「うん。」

布美枝「迎えに来てくれるとは 思わんだった。」

茂「うん。」

布美枝「バナナなんて買う余裕 よく ありましたね…。」

茂「ほれ。 一六銀行から借りてきた。 つきあいも長いけん 多めに貸してくれたぞ。」

布美枝「大変なのは 分かっとります…。 今でも 苦しいし 不安ですけど…。 なんとかなると思うんです。 あなたも私も 遅い結婚でしたけど こげして… 子供を授かりましたけん。 せっかく 授かったんですけん 大事にしたいんです。 私… 産みます。」

茂「映画でも見て帰るか。」

布美枝「え?」

茂「せっかく 2人で出てきたんだ。 まっすぐ帰ったら もったいない。 今のうちだけんな。 子供が生まれたら 2人で外には出られんぞ。 まあ 今までも そろって 出かけた事は なかったか。」

茂「いきなり聞いたんで びっくりした。 子供の事…。 男には 心の準備がないけんなあ。 金のないとこに 子供ができて これから どげなるか 俺にも分からんが…。 まあ なんとかなるだろう。」

布美枝「はい!」

茂「ほい 食うか? 土産のバナナから 俺達の分 失敬しといた。」

布美枝「まあ!」

茂「うん うまいな。」

すずらん商店街

布美枝「あっちで ヘップバーンの映画 やっとりますよ。」

茂「いや これがええ。」

布美枝「え~…。 ロマンチックなのがええのに。 胎教に悪いわ 戦争映画なんて…。」

茂「おい 入るぞ。」

布美枝「はい はい。」

映画館

(爆撃の音)

布美枝「あっ!」

<結婚して1年半 新婚旅行もなかった2人の これが 初めての 外出らしい外出でした。 そして その夜…>

水木家

居間

布美枝「はい どうぞ。」

茂「おお 赤飯か!」

布美枝「お祝いですけん。」

茂「いただきます。」

布美枝「どうぞ。」

茂「何だ これ? 普通の米か?」

布美枝「はい。 もち米は ぜいたくですけん 節約お赤飯です。」

茂「まあ ええか。 これも 赤飯には変わりない。 祝う気持ちが大事だけんな。」

布美枝「はい。」

茂「うん なかなか うまい。」

茂「おい…。 大事にしぇよ。」

布美枝「はい。」

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