回想終了
暁子「よかったねえ。 お父さんが歓迎してくれて ウフフッ。 名前は? もう決めた?」
茂「うちの人に 『考えて』って 頼んである。」
暁子「今日は お七夜だもの。 名前 つけてもらわんとね。」
布美枝「うん。」
雄一「茂~ おるか~!」
茂「ああ。」
布美枝「あ… お兄さん?」
暁子「まさか こんな日に お風呂 もらいに来たんじゃ ないでしょうね。」
茂「おおっ これは見事な!」
(3人の笑い声)
雄一「やあ どうも どうも!」
佐知子「ご出産 おめでとうございます。」
布美枝「ありがとうございます。」
茂「兄貴が 尾頭付き 届けてくれたぞ。」
布美枝「尾頭付き?」
佐知子「今日は 赤ちゃんの お七夜でしょう。」
雄一「祝いに これを。」
布美枝「わっ!」
茂「ああ 朝から 釣りに 行ってとったのか。」
雄一「おう 品川の堤防で釣り糸 垂れてな 鯛を狙ってみたんだがな。」
暁子「あんなとこで釣れるんですか?」
雄一「いけませんなあ。 いや今日は 寒いせいか ハゼ一匹 釣れませんでした。 したがって… これを調達してきました。」
暁子「カレイねえ。」
雄一「いや 尾頭付きには 違いないですからねえ 代用には なるでしょう。」
茂「うん そげだな。」
雄一「目出鯛の代わりに 末永カレイと いう事で。」
(一同の笑い声)
茂「うまい!」
雄一「いや しかし 朝から 海風に吹かれたせいか 冷えたな。 風呂 借りるぞ。」
佐知子「それじゃ 支度してきますね。」
暁子「やっぱり…。」
布美枝「ウフッ。」
雄一「名前 決めたのか?」
茂「…うん!」
(鳥の鳴き声)
布美枝「藍子…。」
茂「ええだろう。」
布美枝「村井… 藍子。」
(赤ちゃんの声)
雄一「よし。 そこの 鴨居にでも貼るか なあ?」
茂「あ いや ちょっと待って…。 何か もの足りないなあ。 う~ん。」
雄一「あ 絵でも描いたら どうだ?」
暁子「鶴とか亀とか おめでたい絵を添えたら どうでしょう?」
雄一「うん。」
茂「絵か…。 うん。 なるほど。 う~ん…。 よし。」
布美枝「あら?!」
暁子「何ですか? これ。」
佐知子「おかしな目玉 ですね。」
茂「これで ええ。」
布美枝「…あ。」
<『目玉親父』は 鬼太郎の父親です。 姿は奇妙ですが いつも全力で子供を守る 頼もしい お父さんなのです>
布美枝「お父ちゃんが 守っとる…。」
玄関
暁子「うちの年越し済ませて 年が明けたら また来るから。」
布美枝「お正月に悪いけど 一人じゃ 心細いけん お願いします。」
暁子「産後の疲れが出る時だけん 無理しないで ゆっくりしとりなさいよ。」
布美枝「はい!」
暁子「あ そうだ…。 これ。 少しは 助けになるでしょ。」
布美枝「だんだん。」