2階
布美枝「ガスも水道も止められたら あんたのミルクも作れんけんね。 それは 死守せんとね。 おばば どげしよう? お~! お話してあげようか? お母ちゃんね 子供の頃 おばばに よう お話 聞かせてもらったんだよ。 『とんと昔が あったげな』。」
回想
登志『出雲富士の赤池に住む 大きな蛇が 村の器量よりの娘にほれて 『嫁に来れば 村を水に沈め~ぞ』と言ったげな』。
回想終了
布美枝「薄暗い子供部屋で聞く おばばの話 怖くて 楽しかったな。 ん? あんたも楽しいか?」
仕事部屋
布美枝「入ります。 仕事 手伝いましょうか?」
茂「藍子は?」
布美枝「よう 寝てます。」
茂「ほんなら 頼むかな。」
布美枝「はい。」
茂「ここ 墨 塗ってくれ。」
布美枝「はい。 うわ~!」
茂「何だ?」
布美枝「お父ちゃんの漫画 ろうそくの 明かりで見ると 余計 怖い!」
茂「そげだろ? 俺も描いてて ぞくっとなった。 怪奇物は ろうそくの明かりで 描くのが ええかもしれん。」
布美枝「うわ~ 怖い! わ~ 嫌だ 嫌だ!」
茂「わあわあ 言っとらんで 早こと描け!」
布美枝「はい。」
茂「(あくび)」
布美枝「空気 入れ替えましょうか?」
茂「うん ちっと 蒸し暑いな。」
茂「おい おい! マッチ!」
布美枝「あ! あ…。」
茂「ん?」
布美枝「お父ちゃん ほら 見て下さい。 星が きれい!」
茂「あ~ ほんとだな。 梅雨の晴れ間の星空だ。」
布美枝「たまには 暗い夜も ええですね。 電気がない分 星が きれいに見える。」
茂「なら 当分 このまま 電気 止めておくか?」
布美枝「それは ダメです。 1日も早く 通電再開してもらわんと。」
茂「よし 早こと仕上げるぞ!」
布美枝「やりますか!」
<ここを しのげば なんとかなる。 状況は 最悪でしたが 布美枝も茂も まだ どこか のんきな気持ちでいました>
(雨の音)
居間
布美枝「あら どげしたの? むしむしするねえ。 梅雨は 嫌ですねえ。 今日 お父ちゃんが お金 持ってきますからね。 そしたら 電気もつくし おいしいもん いっぱい 食べようね。」