玄関
茂「はい。」
(雷鳴)
大蔵省の男「私 大蔵省の物ですが。」
茂「大蔵省…?」
居間
布美枝「大蔵省だって?! ほんとに 福の神が来たんだろうか?」
玄関
茂「何の用ですか?」
大蔵省の男「実はですね この家が建っている敷地 半分は 大蔵省が管理している 土地なんですよ。」
茂「は?」
大蔵省の男「この地図を ご覧下さい。 ここの農地だった部分 遺産相続の時に 大蔵省に 現物納入されているんですよね。」
茂「はあ。」
大蔵省の男「ですから この家 半分は 大蔵省の土地の上に 建っている訳で。」
茂「すると どうなるんですか?」
大蔵省の男「大蔵省の土地の上では 困りますので やはり どいて頂かないと。」
茂「え?」
大蔵省の男「半分 どけて頂かないと。」
茂「何を言っとるんですか? 俺達に この家から 出ていけと言うんですか?」
大蔵省の男「土地を買い上げて頂くか 立ち退くしかして 頂く事になりますね。」
茂「ちょ… ちょっと 待ってくれ! こっちは そげな事 知らずに 建て売りの家を買ったんだ。 あんた 文句があるなら 不動産屋に言ったらどうだ。」
大蔵省の男「現在の家の名義は 村井 茂さんになってますから。」
茂「おい… おい! 俺達に 一家心中しろとでも言うのか?!」
大蔵省の男「私どもは ただ 法律に決められた 当然の権利を 主張しているだけです。 この土地を買い取って頂くか 出ていかれるか どうぞ ご検討下さい。 日を改めて また伺います。」
茂「…金なんかない。」
大蔵省の男「はい?」
茂「明日 来ようが 来月 来ようが 土地代を払う金なんかない! 家を取り上げるなら とっとと持っていけ! ひもでもかけて 担いで帰れ! どうとでも 好きにするがええ!」
居間
布美枝「あ… お父ちゃん…。」
茂「家を明け渡せとさ。 この梅雨空に 家を取られては かなわんな。 全く 貧乏すると ろくな事がない。 版元も不動産屋も よってたかって 貧乏人から 金をむしり取る。 不公平な世の中だ。 役人まで。 あいつら 一体 誰の味方なんだ! (舌打ち) 世の中 どうかしとるぞ。 家まで取られては もう どうにもならん!」
(藍子の泣き声)
<次々と襲ってくる 不運な出来事に 布美枝達は 追い詰められていくばかりでした>