茂「いや お前の言うとおりなんだ。 このまま破れ去って 終わったのでは あまりに希望がないけんな。 ほれ ここ 見てみろ。 『心配するな。 『悪魔くん』は 七年目に 必ず よみがえることに なっておる』。」
布美枝「『では この理想の戦いは まだ 続くのですか?』。」
茂「『そうじゃ。 地上天国が来るまでは やめられん!』。」
布美枝「『エロイムエッサイム エロイムエッサイム。 我は 求め 訴えたり』。 ほんなら 『悪魔くん』 また 現れるんですね?」
茂「そういう事にしておいた。 そうでなけりゃ あまりに救いがない。 いつか よみがえる。 きっとな…。」
布美枝「はい…。」
<世間から見向きもされなかった 『悪魔くん』が やがて 本当に復活する日が 来るとは 布美枝も茂も この時は まだ 全く知りませんでした>
玄関
靖代「ちょっと大きいけど 来年の春には ちょうど いいから。」
布美枝「いつも すいません。」
靖代「ううん。 お得意さんところから お下がり もらってきただけだから。 あら 先生 お出かけですか?」
茂「ええ 原稿を届けに。」
靖代「じゃ たくさん 原稿料もらって 今夜は すき焼きですか? アハハハ。」
茂「いや~ ハハハ…。」
靖代「はい 行ってらっしゃい!」
布美枝「行ってらっしゃい!」
玄関前
茂「あ~ 寒い!」
玄関
靖代「そういえばさ~ 美智子さんとこ また 来てるらしいのよ。 例の圧力団体。」
布美枝「また あの人達…。」
回想
日出子「よりによって こんな愚劣で 汚らわしい漫画!」
回想終了
靖代「追っ払われたのが しゃくに障ったんでしょうねえ。 あっちこっちで 貸本漫画反対運動 というのを やってるらしい。」
布美枝「そんなの 営業妨害ですよ。」
靖代「ほんとよねえ。 ここんとこ美智子さんとこだって ジリ貧だっていうのに。 正義の味方 気取るんだったら 貧乏人 いじめるなってのよねえ。」
布美枝「ほんとですよ…。」
<漫画の中だけでなく 現実世界でも 『悪魔くん』は 受難続きでした。 それは そのまま 村井家の家計を 更に 圧迫したのです>