道中
布美枝「横山さん! ごめんなさい! ひどい事 頼んで ごめんなさい。 嘘つかせて ごめんなさい。 本当に ごめんなさい!」
飯田家
寝室
ユキエ「ただいま戻りました。」
源兵衛「ああ…。」
ユキエ「看病 代わりますけん。」
源兵衛「ええ。 わしが見る。」
ユキエ「けど…。」
源兵衛「わしが 付いとる。 心配は いらん。」
ユキエ「お父さん すんませんでした。」
源兵衛「ああ…。 あんまり 勝手するなよ。」
ユキエ「はい。」
ミヤコ「お父さん。」
源兵衛「うん?」
ミヤコ「今 歌 歌ってました? 『安来節』。」
源兵衛「いや… 歌っちょらん。」
ミヤコ「ほんなら 夢でしょうか?」
源兵衛「お前の夢の事が わしに分かる訳ないが。」
ミヤコ「そげですね…。 お父さん。」
源兵衛「うん?」
ミヤコ「祝言の日に 私 初めて お父さんに会ったでしょ?」
源兵衛「ああ。」
ミヤコ「本当は あの晩 親の家に逃げて 帰ろうと思っとったですよ。 お父さんが 恐ろしくて 私が ず~っと黙ってたら お父さん 『安来節』 歌ってくれましたね。」
源兵衛「そげだったかな?」
源兵衛♬『名の出たところ』
源兵衛 ミヤコ♬『社日桜(しゃにちざくら) 十神山(とがみやま)』
ユキエ「驚いた。 2人で歌っちょ~な。」
布美枝「うん。 お父さん 付きっきりだね。」
ユキエ「うん。 お母さん あれで 結構 幸せなのかもしれんな…。 フミちゃん。」
布美枝「うん?」
ユキエ「だんだん。 あんたが うちにおってくれて よかった。 ほんとに助かったわ お父さんも お母さんも 私も…。」
布美枝「姉ちゃん…。」
(2人の笑い声)
<それから間もなく 横山さんと ユキエは 改めて 見合いをする事となり 慌ただしく 結婚が決まりました>
居間
源兵衛「娘の祝言に 紋付きも着れんとはな。」
ミヤコ「派手な事は いけんて 朝会からのお達しですけん。」
源兵衛「そげな事 言われんでも 分かっちょ~わ!」
ミヤコ「すみません。」