連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第74話「初めての里帰り」

富田「ちょっと待て! 浦木!」

浦木「あ~! 苦しい! 富田のおやじ!」

富田「座れ!」

浦木「あ… 痛っ! こいつ…。」

茂「お前は少しは 反省せえ!」

浦木「え?」

茂「富田書房が つぶれた責任の一端は お前にもあるんだぞ!」

浦木「そうかなあ? 俺は 戦記漫画の読者に 戦艦や 戦闘機の模型を売って もうけるという 画期的なアイデアを 提供してやっただけだぞ。」

茂「模型の制作費を値切って 浮いた分を自分のもうけに しとったろうが!」

浦木「手広く商売してるんで 明細までは 覚えとらんな。」

茂「ひどい奴だな お前は…。」

浦木「おい! さっきから さも俺が 得したように言っとるがな あの時は お前の惨めな戦記漫画が さっぱり売れんで お陰で 労せずして もうけるはずが むしろ 赤字になっ… いかん。」

富田「もういいさ。 今更 あんたを責める気には ならんよ。」

浦木「へ?」

富田「焦ってたんだな 私も。 昔みたいに もうけようとして…。 不肖富田! すべて 私の不徳の致すところです。」

玄関前

布美枝「富田さん! クリーム塗って寝るとええですよ。」

富田「え?」

布美枝「あ… 手。 寝る前に よくクリーム すり込むと 楽になりますから。 私も 水仕事で 手が荒れた時は そうしてます。」

富田「…奥さん。 お世話になりました!」

<茂とともに 貸本漫画の世界を 生きてきた人が また一人 去っていきました>

居間

浦木「8,000と500円か… しけてんなあ。」

茂「貧乏しとるようだ。 それだけ作るにも 苦労したんだろう。」

浦木「(ため息) やれやれ… お前 忘れた訳じゃなかろうな?」

茂「え?」

浦木「お前が食らった不渡りの額は 20万だぞ! 何だかんだで あの おやじには 他にも 相当 踏み倒されとるじゃないか。」

茂「うん…。」

浦木「はした金をもらって 同情しとるようじゃ 残りの金も 取りはぐれるね。」

茂『金ができたら また持ってくると言っとった。』

浦木「できるもんか 金なんか。 世の中 一度 貧乏になったら なかなか 抜け出せん仕組みに なっとるのよ。 どうだ? 俺が間に入って ひとつ 締め上げてやろうか?」

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