連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第74話「初めての里帰り」

茂「いらん事するな!」

布美枝「よいしょ… ただいま~。」

浦木「しかし富田のおやじ… 毒気が抜けて すっかり 人が変わったな。」

茂「うん… 会社の倒産で 地獄を見たせいだろう。」

浦木「欲だけを支えに 生きとった人間が 欲を無くしちゃ おしまいだ。 あいつ 死に目が近いのもしれん。」

布美枝「ひどい。」

茂「そういや お前 何しに来たんだ?」

浦木「うん? たまに 友の顔を見に来ちゃ いかんのかね? 親友の子供の成長を 俺は 常々 気にかけとる訳よ。 わ~!」

(藍子の泣き声)

布美枝「あららら!」

浦木「奥さん 奥さん奥さん

布美枝「泣かんでも ええよ!」

茂「見ろ お前の邪悪さは 子供にも伝わる。」

浦木「じゃ 邪悪って?」

布美枝「人見知りが始まったんですかね? 子供には こういう時期がありますけん。 もうじき おじいちゃん おばあちゃんに 会うのに 人見知りじゃ 困りますよ。」

浦木「おじいちゃん? という事は 境港に帰るんですか?」

布美枝「私が 藍子を連れて。」

浦木「ほう~! よくまあ 里帰りする 金が できたもんですな。 あ! もしや 悪い金にでも 手をつけたんじゃない…。」

茂「だら! お前と一緒にするな! 昔 描いた漫画の原稿料が 入ってきたんだ。」

浦木「珍しい事もあるもんだな。 目の前で描いて渡しても なかなか 金を払わん 貸本業界で。」

布美枝「深沢さんが 新しく 版元を 始められたんですって。」

浦木「あ~ はるこさんが 最初に頼っていった 出版社の。」

布美枝「もう すっかり 元気になられて。」

茂「昔より 威勢よくなっとったな。」

布美枝「ええ。」

浦木「ふ~ん。」

茂「ん? 何を ニヤついとるんだ?」

浦木「いえいえ 何も。」

玄関前

浦木「いい話を仕入れたぞ。 深沢の復帰の事 はるこさんに 話したら きっと 喜んで…。」

妄想

はるこ「浦木さん ありがとう。」

妄想終了

浦木「う~わ! ヒヒヒヒ! 貧しい家でも たまに訪れると 収穫があるもんだ! しかし 奥さんの里帰りとなると あの家に ゲゲ1人。 う~ん。 万が一にも はるこさんが 接近せんよう 用心せんといかんな。」

数日後

布美枝「ほんなら 行ってきます! よいしょ! お米は 買ってありますし 乾物や缶詰は 台所の下に あと 下着は 引き出しの タンスの下から2番目です。 靴下は 小さい方の引き出しに…。」

茂「ああ ああ もう 分かっとる。」

布美枝「大丈夫ですか? お父ちゃん一人で。」

茂「心配するな ゆっくりしてこい。」

布美枝「あと 近頃は 不用心なんで 戸締りは して下さいね。 それから…。」

茂「早こと 行かんと 汽車に乗り遅れるぞ!」

布美枝「いけん。 ほんなら 行ってきます!」

<茂 一人を残していくのが 少し心配でもある 布美枝でした>

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