はるこ「藍子ちゃんと お買い物ですか?」
茂「いや 実家に戻っとる。」
はるこ「えっ 何が あったんです?! お二人に限って 藍子ちゃんだっているのに!」
茂「いや 里帰りしとるんだが。」
はるこ「えっ?」
茂「藍子の お披露目。 田舎の親達に 孫の顔を見せに 帰っとるんだけど…。」
はるこ「あ… そうか。 そうですよね。 びっくりした。」
仕事部屋
(ペンを走らせる音)
(小鳥の鳴き声)
はるこ「失礼します。 あの… 失礼します。」
茂「あれ? あんた まだ おったのか?」
はるこ「お茶 いれました。」
茂「おう ええとこに。 ちょうど のどが渇いとったんだ。」
はるこ「よかった!」
茂「あんた 仕事は ええんですか? こっちは 間に合っとるけん もう お帰りなさい。」
はるこ「ええ。 でも まだ ちょっと お部屋の お片づけをして。 あと 夕飯の支度もしてから。」
茂「いや そげな事せんで ええ。」
はるこ「そういうのも アシスタントの仕事の うちなんです。」
茂「ん?」
はるこ「だから 先生は漫画を描く事だけに 集中して下さい!」
茂「あ~ はい。」
庭
浦木「あ! あの すっと伸びた おみ足は…。 はるこさん やっぱり ここに! はるこさん!」
はるこ「ああ 浦木さん どうかしました?」
浦木「どうしたも こうしたも お店を訪ねたら 『今日は お休みだ』と言うから もしやもしやと来てみれば…。」
はるこ「何か ご用ですか? 先生なら お仕事中ですから 面会は できませんよ。」
浦木「く~っ ゲゲの奴 あなたに 洗濯までさせて…。 もしや あいつのパンツまで 洗わされたんでは?」
はるこ「嫌だ 浦木さん! パンツだなんて そんな…。」
浦木「なぜ 赤くなってんです? ちょっと はるこさん!」
居間
浦木「実に けしからん。 あなたを お手伝い代わりに こき使うなんて!」
はるこ「アシスタントの仕事ですってば!」
浦木「いやいやいや ちょっと 一円も払わない男の 手伝いなどして 何になるんと言うんです?!」
浦木「第一 不健全ではないですか。 女房の留守に 若い娘が…。」
はるこ「もう! つまんない事 言わないで下さい。 先生が 仕事に打ち込めるように お手伝いしてるだけです!」
浦木「しかし…。」
はるこ「邪魔ですよ!」
浦木「あ~ もう! こんな事! ゲゲに やらせなさい。」
はるこ「離して下さい!」
浦木「せっかくの お休みなんです。 そうだ! 一緒に東京タワーに上りましょう?」
はるこ「一人で上って下さい。 私は 夕飯の支度がありますから。」
浦木「そんな事まで…。 分かりました! では 僕も ここで飯を食います!」
はるこ「何で浦木さんまで! いい加減にして下さい!」
浦木「じゃあ 僕と一緒に 東京タワー上って下さい。」
はるこ「な…! 嫌ですよ!」
浦木「じゃ 焼き肉 食べに行きます?」
はるこ「行きません!」
浦木「じゃ おすし…。 そばとか?」
はるこ「嫌だ! いい加減にして下さい!」
茂「やかましい! さっきから うるさくて うるさくて! 仕事にならん!」
はるこ「…すいません。」
浦木「すまん。」
茂「2人とも帰ってくれ!」