夜
布美枝「台所… 片づきました。」
絹代「ご苦労さん。」
布美枝「そろそろ戻らんと 汽車がなくなりますし…。」
絹代「何 言っとるの? 今晩は 泊まっていきなさい。」
布美枝「けど… うちの方で ちょっこし 気にかかっとる事もありますし。」
絹代「ほんなら 布美枝さんは 帰ってええよ。 藍子は 明日 私が送り届けるけん。」
布美枝「いや… そんな。」
修平「まあ 一晩ぐらい こっちで ゆっくりしったら ええ。」
布美枝「はあ…。」
絹代「なあ。」
布美枝「はい。」
絹代「しげさん ほんとは もうかっとらんのでしょう?」
布美枝「いえ… なんとか。」
絹代「『なんとか』ねえ。 雄一は 雄一で フラフラして 当てにならんし…。」
修平「おい そげな愚痴 聞かせても しかたなかろう。」
絹代「一番 当てにならんのが お父さんですわ。」
修平「しまった! いらん事 言って こっちに 火の粉が降ってきた。」
絹代「カキの養殖詐欺に まんまと 引っ掛かりそうになって。」
修平「あれは ほんとに ええ もうけ話だったんだ!」
絹代「いいえ 詐欺です! うちの男どもは これだけん。 布美枝さん あんたが しっかりせんと いけんよ。」
布美枝「はい。」
絹代「藍子も お~だけん いつまでも 貧乏では どげだいならんわ!」
布美枝「はい。」
水木家
仕事部屋
茂「うん この男の前途は 屁の力によって開ける訳だ。」
(茂の おならの音)
茂「おう! 軽やかな ええ音色だ。 なあ。 そうか おらんのだった。」
村井家
2階
布美枝「うち これから どげなるんだろうか?」
飯田酒店
回想
布美枝「何があっても 一番大事なことは 諦めたらいけん。」
回想終了
貴司「はあ~!」
(足音)
貴司「マチちゃん…。」
布美枝「ただいま 戻りました~! あれ? 誰も おらんかいね? 店も開けっぱなしで。」
邦子「お帰り!」
布美枝「どげしたの?」
邦子「お父さんと 貴司さんが…。」