はるこ「それから 少しずつ 作ってきたんですね。 2人の暮らし。 それは かなうはずないな。」
布美枝「え?」
はるこ「私 先生の事を 好きだったんです。 あ! 変な意味じゃなく 先生の描く漫画が好き。 先生の漫画に懸ける情熱が好き。」
布美枝「はるこさん。」
はるこ「それから…。 先生のご家族が好き。 先生と布美枝さんの関係 うらやましいです。」
<先生が好き 先生の事が好き…。 はるこの笑顔から 胸に秘めた 本当の思いが あふれ出していました>
はるこ「すいません! これ 下さい!」
店員「ありがとうございます。 万葉集の歌をもとに 作ったものなんです。」
<それは 気づいても どうにもならない思いでした。 布美枝は そっと受け止めて 胸にしまう事にしたのです>
はるこ「私 また頑張ります!」
布美枝「はい。」
嵐星社
深沢「じゃあ これ 預からせてもらうよ。」
青年「よろしく お願いします。」
深沢「また持っといで 期待してるから。」
青年「はい! ありがとうございます!」
深沢「うん。」
青年「失礼します。」
深沢「はい。 これ 次の号に載せよう なかなか ユニークで面白い。」
郁子「はい。 河合さん 実家に戻られるんですね。」
深沢「うん 惜しいけどなあ。」
郁子「こうやって 次々 新しい書き手が 出てくるんですね。」
深沢「よし そろそろ 始めるか 新人賞。」
郁子「新人賞? コンクールですか?」
深沢「ああ。 若い人のために 発表の場を 作るのも 雑誌の仕事だからな。 少年誌には 載らない 実験的な作品も うちなら 紹介できるし。」
郁子「ええ。」
深沢「俺も出会いたいしね もっともっと 新しい才能に。」
水木家
玄関前
(犬のほえる声)
浦木「うわ~! はるこさ~ん!」
居間
浦木「はるこさんが消えてしまった~!」
茂「泣くなよ。」
浦木「(泣き声) うるさい。」
茂「ほれ。」
浦木「ありがとよ! どこへ行ってしまったんだろう? 天へ帰ってしまったんだろうか? 月へ戻ってしまったのか?」
布美枝「話した方がええですよ。」
茂「うん。 あのな 天でも月でもなくて 実家に戻ったぞ。」