蓮子「そうだったのね…。」
かよ「好き合ってる2人が どうして一緒になれないの…。」
花子「でも 兄やんは まだ独りだし きっと 今も醍醐さんの事を…。」
醍醐「もういいの。 私 これからは 仕事に生きる事にしましたから。」
蓮子「醍醐さん…。 その愛が本物ならば 必ず いつか成就すると 私は 思います。」
醍醐「蓮子様…。」
英治「龍一君たちが迎えに来ましたよ。」
龍一「もう終わった?」
蓮子「ええ。」
富士子「お母様!」
純平「お母様!」
花子「ごきげんよう 富士子ちゃん 純平君。」
醍醐「ごきげんよう。」
富士子「ごきげんよう。」
純平「お母様を迎えに来ました。」
花子「まあ 偉いこと。 純平君は お母様思いで立派ね。」
龍一「純平のやつ 『お母様は 僕が守る』って 完全に蓮子の味方なんです。 夫婦げんかなんかしようもんなら 僕が一方的に責められますよ。」
醍醐「あら お幸せね。 じゃあ 私も そろそろ。」
花子「ええ。」
龍一「じゃあ 花子さん また。」
2人「ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
蓮子「さあ。」
醍醐「ごきげんよう。」
花子「ごきげんよう。」
蓮子「あっ そうだわ はなちゃん。 明日 お宅へ伺ってもいいかしら? 会わせたい人がいるの。」
花子「えっ?」
玄関前
富士子「さようなら!」
純平「さようなら!」
英治「さようなら。」
蓮子「さあ。」
英治「純平君 また背が伸びたみたいだな。」
花子「ええ。 歩は1つ上だから…。」
英治「今頃 純平君より大きくなってたな。」
花子「英治さんの息子ですもの。 ノッポになったはずよ。」
村岡家
(足音)
庭
「お話のおばさん!」
子どもたち「おばさん!」
「お話 聞かせて!」
子どもたち「聞かせて 聞かせて!」
花子「ちょっと待ってね。」
工房
花子「今日は 何のお話がいい?」
「せ~の!」
子どもたち「『王子と乞食』!」
花子「また?」
庭
花子「『ある日 ロンドンの片隅に住んでいた キャンティという貧乏人のうちに 男の子が生まれました。 そして それと同じ日に 同じロンドンのチューダーという家でも 男の子が生まれました。 このチューダー家は 大きな宮殿でした』。」
蓮子「英治さん ごきげんよう。」
英治「ああ… 蓮子さん いらっしゃい。」
蓮子「あちらが 村岡花子さんよ。」
花子「『チューダー家に男の子が生まれたのを 知って お祝いをしました』。」
黒沢「子どもたち 顔を輝かせて聞いていますね。」
蓮子「ねっ? 花子先生なら ぴったりじゃなくて?」
黒沢「うん。」