応接室
花子「すいません。」
黒沢「逓信省の許可を取ってきます。」
花子「お願いします。」
黒沢「これ全部 村岡先生宛てのお手紙です。 どうぞ ご覧になって下さい。」
花子「ありがとうございます。」
黒沢「では 行ってきます。」
花子「はい。」
<それは 病気の坊やを持つ お母さんからのお手紙でした。>
カフェー・タイム
かよ「もも。 少し休んだら?」
もも「私… 一生懸命働くから ここに置いて。」
かよ「でも お姉やんが寂しがるよ。 ももと一緒に暮らしたいって お姉やん 心から思ってるよ。」
もも「お姉やんは きっと そんな事思わないよ。 あんなに忙しそうだし。」
かよ「お姉やんが あんなに 仕事をするようになったのは 坊やが亡くなってからだよ。 それからは 日本中の子どもたちに 物語を届けるんだって いつも たくさん仕事を抱えてる。 ラジオのおばさんも そんな気持ちで 引き受けたんだと思う。」
JOAK東京放送局
応接室
『村岡花子先生。 『コドモの新聞』 息子が 大層楽しみにしております。 息子は 入院していて ふさぎ込む日もあるのですが 村岡先生の放送を 本当に心待ちにしております。 息子にとって 先生の放送は 希望なのだと思います』。
村岡家
工房
もも「あの…。」
英治「ももさん… 来てくれたんですね。 花子は ラジオ局に行ってますけど 帰ってきたら大喜びします。」
もも「違うんです。 荷物を取りに…。」
英治「えっ… ああ。」
居間
英治「はい。 これですね。」
もも「すみません…。」
英治「実を言うと… 僕は ももさんが羨ましいです。 けんかができる兄妹がいて 羨ましいです。 僕は 弟を亡くしました。 けんかも仲直りも 一人じゃできません。 あっ そうだ。 ももさん ちょっと待ってて。 花子が書いた新しい本 持っていって下さい。」