花子「それから かよに叱られてしまったわ。 石を投げられたのは 私が敵国の言葉を使ったお仕事を しているからだって。」
英治「そう…。」
花子「英治さん? 何かあったの?」
英治「さっき 吉太郎さんがいらして… 青凛社で 軍の印刷の仕事をしないかって 言ってっくれたんだ。」
花子「引き受けたの?」
英治「断ってしまった。」
花子「そう…。」
英治「青凛社は閉めて 僕も軍需工場に 働きに出ようかと思う。」
花子「えっ?」
英治「軍の仕事を受ければ 細々とでも 青凛社を 続けていけたかもしれないのに…。 ごめん。 花子さん。」
花子「断ってくれてよかった。 青凛社は 女性と子どもたちのために 作ったんですもの。」
英治「本当に いいんだね?」
花子「ねえ 英治さん。 踊って下さらない?」
英治「えっ… 踊るって…。」
花子「レコードは かけられないけれど ほら こうすれば いくらでも 音楽は 聞こえてくるわ。」
<あらゆる事を 禁止されたとしても 想像の翼までは 誰も奪う事はできませんものね。>
町中
<戦況は 坂を転げ落ちるように 悪化していきました。>
宮本家
居間
<家を出た龍一は 時折 短い手紙をよこすだけで 一度も帰ってきませんでした。>
ラジオ・有馬『本日 東条首相による 国政運営革新に関する重要発表で 述べられましたように 政府は 学徒をして直接戦争遂行に 参与せしむる事に方針を決定。 これにより 全国の大学 高等学校 高等専門学校在学中の 理工 医系以外の学生の徴兵猶予は 停止せられる事となりました』。
蓮子「そんな…。」
純平「お母様! ようやく 僕も お国のために戦えるんです! お母様たちを守るために 戦えるんです!」
<昭和18年12月 大勢の大学生が本を捨て 学徒出陣していきました。」
純平「安心して下さい。 必ず 命を懸けて 日本を守りますから。」
町中
「突撃~!」
<その翌年 マリアナ沖海戦で 日本軍は大敗。 サイパン島も陥落し いよいよ 本土決戦が 叫ばれるようになりました。>
村岡家
台所
<食料をはじめ あらゆる物が 日を追うごとに 無くなっていました。>
玄関前
花子「はい お弁当。 まあ いつもの日の丸弁当だけど。」
美里「ありがとう お母様。」
英治「食べられるだけ ありがたいよ。 それじゃ 行ってきます。」
美里「行ってまいります。」
花子「2人とも 行ってらっしゃい。」
美里「行ってきます!」
「おはようございます。」
花子「あっ 奥様 おはようございます。」
「これ 回覧板。」
花子「ありがとうございます。」
「今日は 10時から防空演習ですよ。」
花子「はい。」
「夜は 灯火管制の見回りも ありますから 光が漏れないようにね。」
花子「はい。」
「それじゃ 後ほど。」
花子「ええ。 ごきげんよう。」