書斎
回想
スコット『あなたに渡したい本があります』
回想終了
<平和になる時を 待っているのではなく 今 これが私のすべき事なのだ。 その思いに突き動かされ 花子は 久しぶりの翻訳に 胸を高鳴らせていました。>
花子「『女の子は みすぼらしい古ぼけた 手提げカバンを片手に持って…』。 『緑の…』。 『『もう迎えに 来て下さらないのじゃないかと 心配になってきたもんで…』』。
(電話の呼び鈴)
居間
花子「もしもし。」
ふじ「はなけ。」
花子「あっ おかあ。 どうしたの?」
ふじ『美里ちゃんがいなくなっただよ。』 花子「てっ… 美里が!?」
玄関前
英治「花子さん!」
花子「英治さん…。」
英治「美里がいなくなったって…。」
花子「ええ。 一人で 甲府の家を出たみたいで…。」
英治「花子さん 落ち着いて。」
もも「美里ちゃん!」
美里「お父様! お母様!」
花子「美里! よかった。」
英治「美里。」
美里「ただいま帰りました!」
もも「お母様が どれほど心配したと 思ってるの!」
花子「もも…。」
美里「ごめんなさい…。」
居間
英治「どうして 黙って 勝手に帰ったりしたんだ?」
美里「お母様がご病気だって聞いて ずっと心配だったの。 それに 東京に爆弾が落とされたって みんなが話してるの聞いて 私 じっとしていられないほど 心配になって…。 ごめんなさい。」
花子「美里…。」
英治「東京は 次 また いつ空襲があるか 分からないんだぞ。」
美里「それでもいいわ! 私 どうしても お母様のそばにいたいの!」
英治「美里…。」