茂木「葉山さん。 お兄様が 面会にいらっしゃってますよ。」
蓮子「はい。」
談話室
醍醐「あの方には 近づかない方が いいって言ってるのに。」
はな「あちらから話しかけられたの。」
醍醐「私 はなさんの事が心配なの。 あの方と関わると また よくない事に巻き込まれそうで…。 はなさんも この間の事で懲りたでしょう?」
はな「ええ…。」
醍醐「それより 大文学会を成功させましょうよ。」
醍醐「はなさん 連れてきましたわよ。」
畠山「今 演目の相談をしていたの。 去年も おととしも 『リア王』だったでしょう? せっかくだから 新しいお芝居を やろうって事になって。」
醍醐「ねえ 『ロミオとジュリエット』は どうかしら?」
はな「えっ これを舞台で?」
醍醐「舞踏会の場面もあるし 華やかで ロマンチックだわ!」
畠山「すてきね。 賛成。」
「私も賛成ですわ!」
「賛成です。」
畠山「満場一致ですわね。 はなさん。 最後まで翻訳して 脚本を書いて下さらない?」
はな「えっ。」
面会室
(ノック)
蓮子「失礼します。」
葉山「何だ? 私に話というのは。 忙しいから 手短にしてくれ。」
蓮子「お兄様に お願いがあります。 ここから 短歌の先生の所に 通わせて下さい。」
葉山「短歌だと?」
蓮子「ここの生活は 退屈です。 生徒は みんな年下で 話が合いません。 歌を詠む事だけが 私の慰めです。 短歌の先生について もっと深く 日本文学を学びたいのです。 ここは 外出にも 父兄の許可がいるので…。」
葉山「駄目だ。 お前は ここから一歩も出るな。 知り合いに手紙を書くのも禁ずる。」
蓮子「そんな…。」
葉山「お前が ここにいる事は 親類縁者 誰にも知らせていない。 おとなしく 身を隠してろ。 少しは 身の程を わきまえたら どうだ? 父上が芸者に生ませたお前を やっとのことで 子爵の家に 嫁がせてやったというのに 離縁されて戻ってくるとは いい恥さらしだ。 これ以上 葉山の家の名を おとしめるな。」
蓮子「いくら お兄様たちが 私の存在を隠そうとしても 私は こうして 息をして 生きているんです! 私にも 意志というものがあるんです!」
教室
畠山「大文学会の進行役は 私が務める事になりました!」
(拍手)
富山「それで 舞台の演目は もう決まったんんですか?」
畠山「はい。 みんなで話し合ったのですが 今年は 『ロミオとジュリエット』をやりたいんです。」
富山「何ですって?」
畠山「台本は 安東はなさんに 翻訳と脚色をしてもらいます。」
はな「及ばずながら頑張ります。」
富山「いいえ。 『ロミオとジュリエット』なんて駄目です。 私は 反対です。」
はな「富山先生… どうしてですか?」
富山「大文学会の演目として ふさわしくないからです。 今年も『リア王』になさい。 このとおり 台本もありますから。」
醍醐「去年と同じなんて嫌です!」
畠山「もう 配役や衣装も みんなで相談してるんです。 富山先生 やらせて下さい!」
一同「お願いします! やらせて下さい!」
ブラックバーン『静かに』
富山『申し訳ありません』
茂木「どうしたんですか? 富山先生。」
富山「舞台の演目の事で 生徒たちが言う事を聞かなくて。」
はな『私たち、『ロミオとジュリエット』を やりたいんです』
ブラックバーン『なるほど 生徒の意志を尊重しましょう』
醍醐「何ですって?」
はな「皆さんの意志を 尊重して下さるそうです。」
(歓声)
一同「Thank yuu, Miss Blackburn!」
富山「では あなたたちだけで おやりなさい。 私は 一切 手を貸しませんので。」
茂木「富山先生…。」
<富山先生には 『ロミオとジュリエット』を 嫌う訳でもあるのでしょうか。>
はな「この物語は 互いに憎み合う 2つの家に生まれた ロミオとジュリエットが 深く愛し合いながらも その運命に引き裂かれれしまう という悲劇です。」