嘉納邸
<余裕しゃくしゃくの手紙とは 裏腹に そのころ 蓮子は 大層 いらだっておりました。>
黒沢「失礼します。」
蓮子「黒沢さん お待ちしてたんです。」
黒沢「急用とは?」
蓮子「教えて下さい。 何があったんですか? 主人は 今 どこで 何をしているんですか? 私だけ蚊帳の外で 新聞も読ませてもらえないんです。 黒沢さんなら 教えて下さるわよね。 一体 何があったのか 話して下さい。」
黒沢「10日前 ご主人の炭鉱で ガス爆発が起きたんです。」
蓮子「何ですって?」
黒沢「多くの犠牲者が出ました。 ご主人は 事故の処理と けが人に対しての対応に 追われています。 事故が起きてから 炭鉱の労働者たちの衝突が 激化し 彼らひゃ 嘉納鉱業の社屋を 取り囲んでいます。」
蓮子「私は 嘉納の妻よ。 何も知らせてもらえないなんて…。 今から主人に会いに行くわ。」
黒沢「落ち着いて下さい! 本当に危険な目に遭いますよ。」
『社長を出せ!』
(悲鳴)
「嘉納伝助!』
「出てこんか!」
「どこにおるとか!」
「出てこんか!」
「どこにおるとか!」
「社長を出せ! 社長!」
「おい! ありゃあ 嘉納伝助の女房ばい。」
黒沢「ここに 社長は いません。 お帰り下さい。」
「とぼくんな! 社長を出せ!」
「そうじゃ 社長を出せ!」
「おい 女!」
蓮子「ごきげんよう。 私に 何かご用でしょうか?」
<ごきげんよう。 さようなら。>