連続テレビ小説「花子とアン」第59回「乙女よ、大志を抱け!」【第10週】

居間

<ももが北海道に旅立つ朝が やってまいりました。>

はな「北海道の冬は 甲府の何倍も寒いっていうから お姉やんのも たくさん持っていけし。 ほれ。」

もも「こんなに くれて… お姉やんは 冬が来たら どうするでえ?」

はな「北海道の冬は ここよりも ずっと長いから。 ねっ。」

周造「もも。 これも持っていけし。」

もも「おじぃやん ありがとう! 大事に使うよ。」

周造「それから 念のために わらじも もう一足 持ってけし。」

もも「ありがとう。」

吉平「もも これだけあれば十分じゃん。」

もも「うん。」

ふじ「もも! これ 産土様のお守りだ。 持ってけし。」

もも「ありがとう おかあ。」

リン「ほれにしても 北海道なんて遠く行かんでも この辺に 何ぼでもいいのが…。」

ふじ「あっ リンさんが お餞別持ってきてくれただよ。」

リン「ああ。 これ 腹 壊さんように。 おらのお古の腹巻きだ。」

周造「リンの餞別は いっつも 腹巻きじゃんな。」

(笑い声)

リン「これが いっとう いいだよ。 ほいじゃ ももちゃん 元気でね。 あっ 朝市に 家族水入らずの 邪魔するなって言われたから おら これで!」

もも「ありがとう おばさん!」

ふじ「ありがとう。 さあ 荷物 まとめろし。」

吉平「よし。 ほれじゃあ そろそろ 行くけえ。」

もも「おとう 待って。」

はな「忘れ物け?」

もも「うん 忘れ物。 おじぃやん。 おとう。 おかあ。 お姉やん。 今まで どうも ありがとうごいした。」

吉平「もも。 ほんな 改まらんでも…。」

もも「こういうのは こぴっと やらんきゃ駄目ずら。」

周造「そうさな。」

はな「ほら おとうも。」

吉平「はい。」

もも「おじぃやん。 わらじと手袋 ありがとごいす。 ほれと 畑仕事と わら仕事を 教えてくれて ありがとうごした。」

周造「達者でな。 体には くれぐれも 気ぃ付けるだぞ。」

もも「はい。 おじぃやんも まだまだ元気でいてくりょうし。」

周造「そうさな。 もも。 我慢したらいけんぞ。 婿の事なんか 尻に敷くぐれえが ちょうどいいだからな!」

もも「はい。 おとう。」

吉平「おう。」

もも「おらのために 縁談見っけてきてくれて ありがとごいす。」

吉平「もも…。」

もも「ほれから このくしも うんと うれしかったさ。 一生大切にします。」

吉平「もも… ほんな事言うな。 また いつでも買ってやるから。」

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