連続テレビ小説「花子とアン」第70回「銀座のカフェーで会いましょう」【第12週】

タミ「誰かしゃんは 二度も 婚礼ば経験しちょるとに ちっとは 嫁入り支度ん手伝いば しちゃっても よかろうにねえ。」

冬子「お母様は この結婚に ず~っと反対なさっちょるき。」

タミ「あっ。 あら~ 奥様 おんしゃったとですか。」

蓮子「黒沢さん 参りましょう。」

黒沢「冬子さんの嫁入り支度 女中さんたちに 任せきりのようですが よろしいんですか?」

蓮子「私も 冬子さんくらいの時 いやいや 結婚させられた事を 思い出して どうしても 祝福できないのよ。 さあ ご覧になって! 気分がいいから 黒沢さんに贈り物をしたいの。 どれでも お好きな物を選んでね。」

黒沢「こういう贈り物は 新聞社の規則に反しますから…。」

蓮子「私 ジャブジャブ お金を使う事に 決めたの。 新興成金の妻らしくね。」

黒沢「湯水のように お金を使っても あなたの心の空洞は 埋まりませんよ。」

蓮子「ねえ それじゃあ 東京のお土産は 何を買ってきたらいいかしら?」

黒沢「(ため息)」

蓮子「10年ぶりに東京に帰るのよ! この幸せを 誰かと分かち合いたいの!」

黒沢「心配です。 あなたは まるで ここから逃げ出そうと しているように見える。 この10年の生活を 全て壊して。」

蓮子「大げさね。」

黒沢「そうでしょうか…。」

蓮子「東京で私に許された自由な時間は たった 一晩。 腹心の友に会って たわいない おしゃべりをして… それだけよ。 私には ここ以外に戻る場所なんて どこにもないんですもの。」

カフェー・ドミンゴ

はな「先生。 是非とも考えてみて下さい。 お願いします!」

宇田川「じゃあ 私の代わりに よその連載小説の続き 書いてくれる?」

はな「承知しました! そしたら うちにも 原稿 書いて下さるんですよね?」

宇田川「安請け合いしないでよ。 逢い引きもした事無い あなたに 恋愛小説が書ける訳ないでしょ!」

宇田川「梶原さんに付けといて。」

かよ「ありがとうございました。」

(ドアが閉まる音)

「今日も せっかくのコーヒーがまずい。」

かよ「すみません!」

かよ宅

(はなが英文を読む声)

はな「elaborate…。 elaborate… elaborate…。 あった。 『入念な』か。」

<そして 待ちに待った再会の日が やってまいりました。>

はな「ねえ このくし おかしくねえ?」

かよ「お姉やん ほれ聞くの何回目でえ?」

はな「ふんだって…。」

かよ「大丈夫。 こぴっと決まってるじゃん。」

はな「そう? よし! 夕方 あのカフェーで 待ち合わせしてるから かよにも蓮様を紹介するね。 本当に すてきな方なのよ。」

かよ「お姉やん 会社遅れるよ。」

はな「あっ… ほれじゃ 行ってきます!」

かよ「行ってらっしゃい。」

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