はな「村岡さん その事は…。」
英治「正直に 全部話そう。 花子さんに 英語の辞書を贈った男は 僕なんです。」
ふじ「てっ!」
吉平「てっ! 一体 どういうこんでえ?」
ふじ「ふんだって ほの人は 結婚してるって…。」
英治「僕には 妻がいました。 半年前に 病気で亡くなりましたが…。 花子さんと初めて出会ったのは 花子さんが まだ 女学校に通っていた時の事です。」
英治「それから 妻に出会い 結婚しました。 花子さんと再会したのは 去年の春 花子さんが上京して 聡文堂で働き始めた時です。 僕は… 妻がいる身でありながら 花子さんの事を 好きになってしまいました。」
はな「違う… おらが悪いの。 英治さんが結婚してるなんて 知らなんで 『好きです』なんて 言っちまったから…。」
吉平「ほれで?」
英治「僕は なんとか 花子さんへの思いを 忘れようとしました。 でも 妻には 分かったようで 『離婚したい』と言われました。 離婚してすぐに 妻は 亡くなりました。」
ふじ「てっ!」
吉平「駄目だ。 この結婚は 認められん! 離婚しただけなら いい。 ふんだけんど… 奥さんを亡くしてる男とは 一緒になっても幸せになれん。」
はな「…どうして?」
吉平「亡くなった奥さんへの思いは この人の中に生き続ける。 ほんな男と一緒になっても はなは 幸せになれん。」
はな「おとう。 おら ほれでもいい。」
ふじ「はな!」
はな「前の奥さんの事も全部含めて おら 今の村岡さんを好きになったの。 おら… 自分は もっと強い人間だと思ってた。 ボコの時っから ちっとぐれえ つれえこんがあっても 心を強く持って 人前では 笑ってた。」
はな「ふんだけんど 村岡さんと会ってっから 自分は なんて 弱い人間なんだろうって思った。 泣くほどの つらい思いも 飛び上がるほど うれしい思いも どうしようもねえほどの ときめきも 全部 村岡さんから 教えてもらった。」
はな「村岡さんを好きにならなんだら こんな時分にも出会えなんださ。 おとう おかあ…。 おら 村岡さんと一緒に生きていきたい。 結婚させて下さい!」
英治「お願いします! 必ず 花子さんを幸せにします!」
ふじ「フフフフ…。 ほういや おらたちも…。」
回想
ふじ「お父やん! お願えしやす! こん人と結婚させてくりょう!」
吉平「お願えします!」
回想終了