晴海の病室
(ノック)
晴海「はい。」
純「お母ちゃん 起きてる? 体調どう? 大丈夫?」
晴海「うん。 純。 おとうさんは?」
純「今ね お父ちゃん 寝てんの お母ちゃんの看病 徹夜でやってたから 疲れちゃったみたい。」
晴海「そうね。」
く 苦しいウソだ。
純「そうだ ねえ お母ちゃん 聞いたよ お父ちゃんと結婚する前 お父ちゃんのこと メロちゃんって呼んでたんだって。 で なんで メロちゃんなわけ?」
晴海「おとうさんさ 太宰治が大好きでさ 会う時は その話ししかしないわけ 走れメロスの話しになったら もう止まらなくてね。 その顔が 一生懸命で あんまりかわいいから メロちゃん。」
純「へえ そうなんだ。」
晴海「人間不信になっていた 王様はさ 真の友情や永遠の愛があるなんて 信じられなくてね。 でも 約束を守ったメロスを見て 自分が間違っていたって悟るの。 嬉しそうに話すおとうさんを見てさ 私 結婚しようって 決心したのかな 不器用で不愛想だけど この人なら 信じてもいいかなって思ったのね。」
純「そっか。]
善行の病室
純「ちょっと お父ちゃん お願いだから 目覚ましてよ。 このまま 死なれたらさ お父ちゃんが何考えてたのか 全然分かんないじゃん 最後までケンカして仲直りできないなんて イヤだよ私。」
純「お父ちゃんのことさ もっと知りたいよ私。 好きな本の話しとかさ お母ちゃんと付き合った頃の話しとかさ もっと私に聞かせてよ お父ちゃん。 ほら。 あ そうだ これ! ねえ お父ちゃん これ覚えてる? お父ちゃんがさ 私が大学入った時に入学祝いにくれたやつ。」
純「もうこれさ こんなのさ大学生ではくかって くらいダサいからさ 全然はいてなかったんだけど 里やで働きだしてからね。 動きやすいし 毎日はいてんだよ。 なんかね これはいてるとね お父ちゃんの 優しさを感じるっていうか… やっぱりなんか お父ちゃんに愛されてたのかな とか思っちゃうね 今思ったら 遅いよね。」
純「ごめん お父ちゃん 今まで酷い事とか言って もう私 謝るからさ 心入れ替えて 親孝行とかも ちゃんとするからさ 優しくするからさ だから 目覚ませよ アホ親父! ねえ! お父ちゃん 起きてって 起きて! お父ちゃん 生きてよ ねえ! 死ぬなんて許さないからね 私 お父ちゃん ねえ 信じてるんだからね 私は お父ちゃん。」
愛「純さん! 純さん!」
純「ああ!」
看護師「何やってるんですか?」
純「お父ちゃん! 私 お父ちゃん 絶対奇跡信じてるからね。」
愛「純さん。」