カイザープラザホテル
客室
善行「どういうことや? これは? お前 俺を尾行してきたんやな?」
愛「すみません。 あの 家族のことなんで ちゃんと 話し合ってから決めた方がいいんじゃないかって。」
純「そうよ。 元々ね ホテルも家もお母ちゃんのなんだからね。 勝手に売ったりしていいと思ってるわけ? お父ちゃん。」
善行「勘当した娘は黙っといてくれ。」
晴海「おとうさん お願いですから 冷静になって下さい。 家まで売ったら どこに住めばいいんですか 私達?」
善行「だから 何べんも 言うてるやないか 俺の仕事に合わせて 大阪に引っ越してきたら ええんや! どないしたんや うっとおしいな その手は?」
晴海「さっき ちょっと ぶつかったとき くじいてしまって。」
善行「くじくというのはな 足の場合や 手の場合はひねると言うんや メモして書いておけ マリヤ お前 メモして書いて渡しておけ おかあさんに。」
晴海「ねえ なんとか 言って あんた時期社長でしょ?」
正「お父さん さすがに 今回は慎重に決めた方がベターじゃないかな? 大阪に引っ越すとなると マリヤのベイビーのこともあるし 俺の仕事探しもマストになるしさ。」
善行「おい なら聞くがな 借金はどうやって返すんや? ここのホテルからも 前の社長から受けた 融資 早く返せって 言うてきてるし 家も抵当 入ってんねんぞ? このままやと 家も取られてしまう。」
善行「それをや それをや 昔のよしみで 部下やった男が 全部引き取って この俺に 新しい仕事まで用意してくれてんねん 俺はなあ 大阪戻って もう一回だけでええ 10億、20億の その仕事の話しがしたいんや 家族揃って 大阪でやり直そう! その どこが悪いんじゃ!」
純「開き直んないでよ。 お母ちゃんの宮古に家を守りたいっていう気持ちは どうなるの? おじぃが ホテルを作った思いは どうなんのよ?」
善行「お前の意見は 聞いてない それにお前は 生きてる父親より 死んだおじぃの方が大事なんやもんな?」
純「じゃあ お父ちゃんは家族を大事にしてるの? お母ちゃんもお兄ちゃんも こんな暗い顔してんじゃない。」
善行「お前の意見は聞いてない。 俺はとにかく 決めたんや 向こうさんはな また 新しい契約書を作るて 言うてくれてる 明日にでも 俺は やる そう もうなんとしても 俺はやる もう一切邪魔はさせん おい!出て行ってくれ!」
純「ちょっと。」
善行「出て行ってくれ! この部屋から出て行ってくれ。」
純「ちょっと。」
愛「純さん!」
善行「出て行け! ほらほら これが目に入らんのんか? ドンディスカードじゃ!」
純「ちょっと! お父ちゃん!」
ロビー
純「どうすんの お母ちゃん? このまま 指くわえて見とくの?」
晴海「はあ… そんなこと言われても… どうしよう 正?」
正「まあ とりあえず 今夜はここにステイして 考えようか? 今後の対応策。」
晴海「そうね マリヤさんも 疲れたでしょ?」
マリヤ「私大丈夫よ お義母さん。」
純「あ! ねえ だったらさ 今日ウチ 泊まれば? ちょっと狭いけど 多分寝れると思う。」
晴海「え…。 あの でも… 悪いよ 愛さんに。」
愛「あ いや。 僕なら 大丈夫です。」
純「ねえ 大丈夫だよね。 しかもね 愛君の料理 メチャクチャ美味しいから 食べに来てよ。」
晴海「でもさ ほら。 おとうさんのことも心配だし 近くに居た方がね。 悪いけどさ 部屋取ってくれね 純?」
純「いいけどさ…。」
フロント
晴海「あ 勿体ないから 1部屋でいいよ 補助ベッド 私が寝るから。」
純「承知しました。」
晴海「ああ!」
純「え?」
晴海「純。 家族割引ないの?」
純「ないよ そんなもん。」
正「でもさ ここ いいホテルだよね 今度 大阪来たら 就職頼めっかな?」
マリヤ「でも 部屋汚かったよ さっき。」
正「そうだっけ?」
あんたら 好きなことを
純「こちらが ルームキーになります」
晴海「あ! そうだ純。」
純「ん?」
晴海「忘れてた この前 掃除してたら 出てきたよ。」
純「ん? なにこれ?」
晴海「おじぃが あんたと話してるのを録音してたみたい。」
純の自宅
純「あ! これだ よいしょ」
おじぃ『テスト テスト 今日は おじぃの誕生日だから 純が歌を プレゼントしてくれます。』
純『やだよ おじぃ 恥ずかしいし。』
おじぃ『大丈夫だよ 純 お~い! 善行さんも晴海もみんな聞いてくれ 純が歌うから』
純『いくよ。 ハッピーバースデートゥーユー ハッピーバースデートゥーユー ハッピーバースデーディア おじぃ』
愛「ぷっ!」
純『ハッピーバースデーディア おじぃ…』
純「ちょっと!」
愛「純さんも音痴だったんですね。」
純「うる うるさいよ。 ご飯食べようっと。」
愛「せっかくだから 最後まで 聞きましょうよ。」
純「やだ!」