山口「女やからやで。」
糸子「え…。」
山口「男のわしより お前の方が クビにしやすかったんや。」
糸子「そら そうかもしれん。」
山口「お~い 悔しがれや お前 もっと!」
糸子「はあ?」
山口「お前の方が わしより 仕事できんのに 女やからちゅうだけで 先 クビになったんやで?!」
糸子「分かってますわ。 そんな しつこう言われんかて!」
<何が言いたいんじゃ こいつ!>
山口「負けんなや。」
糸子「はい。」
山口「ほなな。」
糸子「あの…。」
山口「ん?」
糸子「ひょっとして それ 言いに来てくれたんですか?」
山口「ちゃう!」
小原家
子供部屋
<今まで 新聞なんか よう読んだ事もなかったけど その日ぃだけでも 不況の字は 36個もありました>>
糸子「だあ! あ~。 こんなん 夜 読んだら あかん。 朝 読もう。 朝! だあ!」
居間
妹達「おはようさん。」
善作「おう。」
糸子「あんたら もう学校か?」
静子「そうや。 昨日で 夏休み 終わりやもん。」
糸子「そうか…。」
静子「うん。」
善作「ほな いただきま~す。」
一同「いただきま~す。」
<夏も終わって これからは アッパッパも もう売れんようになります。 はよ どないか せな>
糸子「今日は 夏木町の方 行こう思てんねん。」
善作「ほうか。」
糸子「うん。 行ってきます。」
ハル「うん。 行っちょいで。」
千代「行っちょいで。」
糸子「行ってきます。」
千代「気ぃ付けて。」
町中
(ハイヒールの靴音)
小原家
小原呉服店
木之元「毎度! 糸ちゃん いてるか?」
善作「おらん。」
木之元「何や どこ 行ったんよ? パッチ屋 クビになったん ちゃうん?」
善作「新しい仕事 探しに行ってんや。」
木之元「ははあ~。」
善作「あのな 世の中の人ちゅうのはな そんな お前みたいに ヘラヘラ ヘラヘラしてへんねん。」
木之元「ふ~ん ほうかあ。 せっかく 気晴らしに ええもん 見せちゃろ思たんやけどんなあ。」
善作「ちょっと待て!」
木之元「あ?」