エレベーターホール
「ありがとうございます。 上へ参ります。 上へ参ります。 上へ参ります。」
糸子「は! あの あの! すんません!」
花村「ああ。」
糸子「昨日は おおきに!」
花村「ああ。 あ いやいや どうも こちらこそ。」
糸子「描いてきました!」
花村「はあ?」
糸子「デザイン!」
花村「あっ…。 こんなとこでは 何やから また今度…。」
糸子「あ ちょ ちょ ちょ ちょっと! 見るだけ! パッと見るだけ! ごっつええのが 出来たんです!」
花村「かなんな… もう。」
糸子「どうぞ!」
花村「ふ~ん… あきませんな。」
糸子「あきませんか?」
花村「あきません。」
糸子「どこが? どこが あかんのですか?」
花村「どこが? どこが…。」
糸子「あ ちょ ちょ ちょ ちょっと…。 どこが? どこ… あ ちょ 何が?」
入口
糸子「教えて下さい! 何が あきませんか? 言うて下さい! あかんとこ 直しますさかい!」
花村「ええかげんにしなはれ もう! 甘えたら あかんわ。 何が悪いか それを考えるのは あんたの仕事やろ?」
糸子「はい。 すんません… そうでした。 うちの仕事でした。」
花村「要は 普通なんや。 何が悪いか あんたに 今 聞かれたから ひと言で ズバッと 言うてやろ思て 言えんまま ここまで 歩いてきてしもたがな。」
糸子「はい。」
花村「とゆう事はや そう悪いもんでも ないのかもしれん。 けど ええかゆうたら 決して ええ事はない。 普通なんや。 仮に あんた以外の洋裁屋 10人 集めても 9人までは これぐらい描いてくる。 その程度のものは 要らんとゆう事や。」
糸子「はい。」
花村「はあ スッキリした!」
糸子「おおきに!」
花村「いやいやいや 何でやねんな。 あのな 断ったんやで。 もう持ってきたら あかんよ。 よろしいな!」
<そんなん まともに聞くうちやありません>
糸子「見とれえ…。」