岸和田商店街
木岡「な な! どいてや!」
糸子「走らんでええて おっちゃん。」
木岡「何がや! はよ 医者に診てもらわな 歩けなくなったら どないするんじゃい!」
<木岡のおっちゃんが だんじり並みの走りを 見せてくれた おかげか…>
病院
(ドアが開く音)
<うちは 歩けへんようには なりませんでした>
木岡「どやて?」
糸子「うん『ミシンは 1週間ほど やめて また 診せに来なさい』て。」
木岡「歩けるんけ?」
糸子「うん。」
木岡「この子な 11月に 祝言 決まってるんですわ!」
「大丈夫。 それまでには 治りますよ。」
木岡「はあ~ よかった…! は すいません 行こう。」
小原家
座敷
貞子「ふ~ん いまひとつやなあ。」
「いや~ せやけど これなんか 上物中の 上物なんでっせ。 見とくなはれ この箔使い。」
糸子「おばあちゃん。 うち これで ええて。」
貞子「千代 あんた どう思う?」
千代「そうやなあ それも似合うてるけど もっと ちゃうのんも 見てみたいなあ。」
貞子「そやろ? 私も この中では よう決めんわ。」
「ほな また別のを お持ちしまひょか?」
貞子「そうしてくれるか?」
「へえ。」
ハル「こんなん してもろて ありがたい事です。」
貞子「そら おかあさん 何て言うても 糸子の花嫁衣裳ですから 何ぼ出しても 惜しない 思てます。」
千代「いや~ おおきに!」
(笑い声)
<はあ~ はよ祝言 終われへんかの… そやけど 悪い事ばっかりでもありません>
小原洋裁店
糸子「おおきに。」
「お祝いちゅうたら 何やけど この際やし 注文さしてもらうわ。」
糸子「いや~ おおきに。」
<こんなお客さんも チラホラ来てくれて>
(ミシンの音)
<今月は ちょっとは 儲けも出そうです。 けど…>
(ミシンの音)
<膝は なかなか 休める間も ないせいか きっちり治ってくれてません。 ひどなるたんびに 病院 行っちゃあ 先生に『治す気あるんか!』て 怒られて 帰ってきます。 そやけど ある日ぃ うちは 気付いたんです>
病院
<は~ うちとした事が 今日まで 何 ボケッと見ちゃあったんや。 こんな ええ商売の口が 落ちてるやんか>
医師「はあ?」
糸子「看護婦さんの制服を 洋服にすべきです。 看護婦さんみたいな 大変な仕事の人らの制服こそ もっと動きやすうて 衛生的でないと あきません! うちは こう見えて 心斎橋百貨店の制服を 作ったんです。 どうか うちに任せて下さい。」
医師「いや そやけど あんた『その膝を ちゃんと休め』ちゅうてんのに…。」
糸子「いや それは あの…。 うちには 弟子が 3人 いてますよって ミシンは その子らに 踏ませます! あ デザインは もっとええの 考えますよって。 ちょっと すんません。」
医師「あ こらこら これは カルテや!」