オハラ洋装店
昌子「先生? 気分でも悪いんですか? あれ? 紅は? もう さすん やめたんですか?」
糸子「あんなあ。」
昌子「はい。」
糸子「うちが歌舞伎 見に行った日ぃ あったやろ?」
昌子「はい。」
糸子「あの晩 大将 包み 何個 持っちゃったか 覚えてるけ?」
昌子「はあ?」
糸子「2個ちゃうかったけ? 1個は 大福 もう1個は 百貨店のちゃうかったけ?」
昌子「覚えてませんて。 何なんですか?」
糸子「何や そんな気ぃしてきたんや。 急に。」
<どうせ そんなとこやったんちゃうか>
2階 座敷
<はあ ほんまに別嬪やなあ。 こんな別嬪が好きで 何で うちと結婚したんやろ>
回想
勝「そやから顔 見に来たんや。」
糸子「何で?」
勝「見に来たかったからや。」
勝「ロイヤルで あんたが働いてるとこ見て ええなあ思たんや。 こいつの仕事っぷり ほれぼれすんのう思ちゃったやし。」
回想終了
台所
<要するにや>
ハル「こら あんまり食べなや。」
<うちは女として好かれちゃった 訳ちゃうんや。 ただの稼ぎ手として 見込まれちゃっただけや。 ほっといても 嫁は せっせと稼ぎよる。 そやさかい 自分は なんぼでも 外で別嬪と遊べる。 ほんで うちを 大事にして くれちゃった。 そんだけや>
オハラ洋装店
糸子「ああ 芋 食べ過ぎた。」
昌子「先生 どこ行っちゃったんですか! この年の瀬の忙しい時に さぼってる暇…。」
糸子「分かってる! どうせ うちは仕事しか 能ないよって。 今日から飛ばすで。 うちとした事が ここ何日かで 後れ 取ってしもた。」
昌子「まあ ほんなら安心しますけど。」