連続テレビ小説「カーネーション」第8回「運命を開く」【第2週】

千代「糸子。」

糸子「へえ?」

千代「お父ちゃんがな もうアッパッパは 着たらあかんて。」

糸子「はあ? 何で?」

千代「呉服屋の家のもんが 洋服なんか着んのは おかしいさかいな。」

糸子「何で急に?」

千代「もう 泣かんでええ! ほら! 着替えたら お父ちゃんかて もう怒らへん。 な! ほら 清ちゃん あんたも着替えや。」

小原呉服店

糸子「お父ちゃん。 何で?」

善作「ああ?」

糸子「何で アッパッパ着たらあかんの?」

善作「何でもじゃ。」

糸子「着てもええやんか 呉服屋の娘かて アッパッパ着てもええやんか?」

善作「やかましい! わしがあかん ちゅうたら あかんのじゃ。 お前 2度と あんなもん縫うたら 承知せんど!」

台所

ハル「神宮司さんとこの にいちゃんが この秋 結婚すんやし。 神宮司ゆうたら この辺の 大地主やさかいな。 お父ちゃん てっきり こら紋付きの ごっつええのん 買うてもらえるでえちゅうて 喜んじゃったんや。 そやけどな…。」

回想

神宮司「かなんねん 相手の家が洋行帰りでなあ。」

善作「どちらですねん?」

神宮司「フランスや。 こらがまた見事に かぶれちゅうやつでのう。 何でもかんでも フランス式に やりたがりよるんや。 娘には 着物やのうて ドレス着せてやりたい。 うちのせがれにも 紋付きやのうて 燕尾服ちゅうやつで 出てほしいちゅうて 言うてきよったんや。」

善作「え えんびふく?」

神宮司「洋服や。」

善作「いやいやいや そら あかんですわ! 息子さんの大事な門出の 日ぃでっしゃろ?」

神宮司「うん。」

善作「そんなもん 旦那の口から ばしっと『男は紋付きじゃ』言うて 筋通したらよろしいねん。」

神宮司「そやねん わしも そう思たんや。 アホぬかせ! うちのせがれに 洋服みたいなスカタンなもの 着せられるか!」

善作「おう!」

神宮司「そう思うたんやけど… まあ。」

善作「は?」

神宮司「割り方 ええんや これが! 若いだけあって しゃあっとして よう映りよんねん。 ハハハハ! これからの男はなあ 日本だけやのうて 世界に出ていかなあかんやろ。 着物だけやのうて 洋服も ちゃんと着られるように ならんとあかんさかいな。 ハハハ!」

回想終了

糸子「それとアッパッパと どない関係あんねん。」

ハル「分からんか。 そないして 洋服を着るもんが 増えちゃってみい。 ますます 着物 売れんようになって お父ちゃん 商売あがったりやんか。」

糸子「分かってるわ。 分かってるけど…。」

木岡履物店

玄関

木岡「商売替え?」

奥中「ほう? 何すんな?」

木之元「電気屋や。」

一同「電気屋?」

木之元「これからは電気の時代や。 見ててみい 何でもかんでも 電気で動くようになるさかい。」

木岡「はは~ん。」

木之元「ほんまやで! 飯炊きかて 掃除かて 全部 電気がやるようになるんやて。」

善作「また どこぞで吹き込まれてよお。」

奥中「どこや?」

木之元「まあ その…。 問屋がな。 そない言うちゃったんや。」

木岡「や~めとけて。 お前 今の玉突き屋かて だまされて初めたんちゃうんけ?」

木之元「ビリヤード!」

善作「よう考えてみ。 玉突き屋 もうかってるか? お前 玉突き屋 始める時 何ちゅうた? これからは 金が嫌っちゅうほど 入ってくんでえ! ちゅうとったのう!」

木之元「ほらまあ…。 そないもうかっては… いないけどな。」

木岡「ほれみい!」

善作「だまされてるて。」

木之元「いや 電気は ほんまや。 これからは電気の時代なんやて!」

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