回想
千吉「足袋ゃあ 作り続けてくれ。」
勇「もちろんじゃ。 足袋ゃあ 雉真の1番バッターじゃからのう。」
回想終了
勇「雉真の足袋が… こねえな形で ひ孫の仕事の役に立つたあ。 父さんも 草場の陰で どねえに喜んどるじゃろう…。 作り続けてよかった。 守り続けてよかった。 わしゃあ 今 心から そねん思う。」
(泣き声)
喫茶店・ディッパーマウスブルース
(拍手)
慎一「ありがとうございました。 はあ~ 夢みたいです。 こんな小さな喫茶店で トミー北沢と 大月錠一郎が演奏してくれるなんて。」
るい「どこでも気分が乗ったら 演奏しはるんや。」
慎一「ツアー帰りに寄ってもらって セッションなんて 感激です。」
(足音)
慎一「じいちゃん。 じいちゃんってば。」
健一「うるせえのお。 わしゃあ 今 余韻に浸りょんじゃ。」
錠一郎「ますます定一さんに似てきたなあ。」
健一「アッハハッ。」
(せきばらい)
健一「錠一郎君。」
錠一郎「はい。」
健一「トミーさん。 クリスマスッフェスチバルに 出てもらえんじゃろうか?」
錠一郎「クリスマスッフェスチバル?」
トミー「クリスマスフェスティバル?」
慎一「じいちゃん。 駄目だよ そんな無理なお願いしちゃあ。」
健一「何でなら。」
慎一「何でって…。」
トミー「何なの? それ。」
慎一「ジャズのコンサートです。 クリスマスの。」
るい「えらい急な話やねえ。」
慎一「あっ 今年じゃなくて 来年のクリスマスです。」
錠一郎「ああ 来年か。」
慎一「地元のイベントなんです。 場所だって小さいですし。」
錠一郎「どこ?」
慎一「偕行社です。」
錠一郎「偕行社?」
健一「ああ。 陸軍将校の社交場があった場所じゃ。」
トミー「ああ。 昔 進駐軍に接収されてたいう建物か。」
るい「ジョーさん。」
錠一郎「うん。」
トミー「何や?」
錠一郎「あっ いや… 僕がジャズに出会った場所や。 定一さんが 酔っ払って 『サニーサイド』歌ったステージ。 あれも クリスマスやった。」
トミー「ああ そういうことか。」
慎一「どうして ひいじいちゃんが 進駐軍のステージで歌うの?」
健一「知らん。 じゃから 酔っ払っとったんじゃろう。」
慎一「ええ… すごい度胸だな…。」