錠一郎「トミー。」
トミー「はいはい。 皆まで言うな。 ええよ。」
慎一「えっ。」
トミー「出るよ。」
慎一「ええっ! 本当ですか? 本当にいいんですか?」
錠一郎「僕も 演奏してみたい。 あのステージで。」
大月家
回転焼き屋・大月
♬~(ラジオ)
錠一郎「ただいま。」
ひなた「あっ お父ちゃん お母ちゃん お帰り。」
るい「ただいま。」
ひなた「トミーさんも お帰りなさい。」
トミー「おう サニーちゃん。」
ひなた「サニーちゃんて…。」
錠一郎「ミュージシャンは 変な符丁で呼びたがるもんなんや。」
トミー「符丁て言うな。 しかも変て言うな。 どないや? ハリウッド映画は。」
ひなた「マット・ロリンズが めちゃくちゃ かっこいいです。」
錠一郎「そうか。 楽しみやな。」
ひなた「はい。」
錠一郎「ひなた。」
ひなた「うん?」
錠一郎「ちょっと お茶いれて。」
ひなた「は~い。」
るい「トミーさんも どうぞ。」
トミー「いや 俺は ここで。」
るい「えっ? ここまで来はったのに。」
トミー「サッチモちゃん。 気ぃ進まへんか? 偕行社のステージ。 何や そんな顔してたから。」
るい「あ… そやないんです。 うれしいです。」
トミー「ほな 何で?」
るい「トミーさん。 こんなこと言うの ぜいたくなんは分かってるんですけど…。 トランペットを吹かせてあげたかった。 その特別な会場に ジョーさんのトランペットが 響き渡るのを… 聴いてみたかった。 フッ すいません。 言うても詮ないことを。」
トミー「いや。」
錠一郎「るい。 トミー。 お茶入ったで。」
るい「あっ そしたら…。」
トミー「うん。 また。」
錠一郎「あれ? トミーは?」
るい「帰らはった。」
錠一郎「え~ 何で?」