千吉「あ… 頂きます。 うまい。 ぬくもりますな。」
金太「ありがとうございます。 よろしいですか?」
金太「この… 母の作るお汁粉が 父の菓子作りの… この店の原点なんです。」
千吉「そうでしたか。」
金太「父の旅立ちの時 真新しい お気に入りの足袋う はかせてやることができました。 雉真繊維の足袋が 足になじんで歩きやしんじゃいうて 常々 言ようりました。」
千吉「うちは 足袋作りが原点でした。」
玄関前
千吉「突然 お邪魔して 結構なお汁粉を頂戴しました。」
金太「もしや… ご長男さんは この度の学徒出陣で…?」
千吉「ああ。」
金太「うちのせがれは 昨年 出征しました。 どうしようもねえ悪たれで 勘当した息子です。 わしゃあ 意地ゅう張って 最後まで うちに入れてやらず 見送りにも…。 どうぞ 悔いのないように 息子さんを送り出されてください。」
安子「お気を付けて!」
<稔は 出征を前に 頭取の娘と祝言を挙げるため 岡山に向かっていました>