算太「すんません。 空襲で死に別れた母ちゃんに生き写しじゃったもんじゃから…。 すんません』。 ほしたら おばはん こねん気取ったバッグから 札束取り出して 『全部 頂戴。 釣りは要らんで』じゃて。 じゃから 全部もろうてきたんじゃ。 しゃあけど 持っとるやつは持っとるのう。」
金太「算太! よう帰ってきてくれたのう 算太。」
算太「何じゃ… 気色悪い。」
金太「すまん。 皆 死なせてしもうた。 母ちゃんも じいちゃんも ばあちゃんも。」
算太「戦争じゃったんじゃ。 しょうがねえが。 父ちゃん。 もう そねん… 気を張るな。 こんなんじゃけど まだ わしが生きとる。 安子も生きとる。 そうじゃろ?」
金太「おめえがのう いつ帰ってくるか分からんからのう わし 待ちょったんじゃ。 ここを動かんと待ちょったんじゃ。」
算太「分かっとる。」
ラジオ・アチャコ『タッチならず セーフ セーフ』。
ラジオ・エンタツ『これ やっぱり 政府の仕事ですか?』。
アチャコ『何をしゃべってんねんな。 バッテリーの間のサイン 極めて慎重 第4球…』。
エンタツ『第4球…』。
アチャコ『投げました』。
エンタツ『投げました』。
アチャコ『打ちました』。
エンタツ『打ちました』。
アチャコ『大きな当たり』。
エンタツ『大きな当たり』。
アチャコ『ヒット ヒット』。
エンタツ『人殺しや』。
アチャコ『球は ぐんぐん のびてます』。
エンタツ『のびてます のびてます』。
アチャコ『のびてます のびてます』。
エンタツ『来年まで のびてます』。
アチャコ『なんでやねんな。 センター バック バック』。
エンタツ『オールバック』。
アチャコ『散髪屋みたいに言うな ホンマ。 ランナー 二塁から三塁』。
エンタツ『二塁から三塁』。
アチャコ『三塁を越えてホーム』。」
エンタツ『ホームを越えてレフト』。
(笑い声)
<金太が亡くなっている という知らせが入ったのは その翌朝のことでした>