ラジオ・平川『「おじ様の会話の時間 なんて すばらしいんでしょう」』。
<驚いたことに ほとんどの家から 『英語会話』は聴こえてきました。 平川さんの温かく朗らかな講座に 誰もが夢中になっていました>
ラジオ『今日の大阪は 北よりの季節風が吹いて 寒さが戻ってまいりました。 明日は 一段と寒さが厳しくなり…』。
澄子「あれ? あんた…。」
安子「すみません! もう しません!」
澄子「ちゃうねん ちゃうねん。 こないだ もろた芋アメな あれ おいしい言うて うちの子らが えらい気に入ってるんや。 また食べたい言うて せがむさかい よそで買うんやけど どれも ちゃう言うて。 あれ まだある?」
安子「はい ここに。」
澄子「ああ! よかった。 なんぼかな?」
安子「ありがとうございます。 一つ5円…。」
澄子「ちょっと大丈夫か!? ちょっと! いや~ もう…。」
ラジオ『体調管理には くれぐれもご注意…』。
小川家
ラジオ・平川『セッキスでも シッキスでもないんです。 ちょうど セとシの間ぐらいですから これを よく聞き分ける耳を訓練して それを 口で言えるように 練習していただきます。 よろしいですか? six six 言ってみてください』。
博子 敏夫「シックス!」
ラジオ・平川『英語には こういうふうに 日本語から見ると はっきりしないような どっちともつかないような中間の音が ありますから この音を正しく発音しないと どうしても 日本人くさい英語になってしまいます。 シックスではなく six。 では 最後に もう一度 言ってみましょう。 six』。
博子 敏夫「six!」
ラジオ・平川『もう一度 six』。
博子 敏夫「six!」
ラジオ・平川『どうです? うまく言えましたか? では また 明晩。 well, until tomorrow night, this is Hirakawa saying, good night everyone』.
♬~(ラジオ『COME COME EVERYBODY』)
♬~(敏夫と博子の歌声)
澄子「あんた 気ぃ付いたんか。 びっくりするがな 急に気ぃ失うて。」
安子「あの…。」
敏夫「芋アメのおばちゃん 起きた!」
博子「おいしかった ありがとう!」
澄子「敏夫。 博子。 宿題終わったんか?」
敏夫 博子「まだ…。」
澄子「ラジオ始まる前にやりなさい 言うてるやろ!」
敏夫 博子「は~い。」
勉「ただいま。」
澄子「お帰り!」
敏夫「お父ちゃんや!」
博子「お帰りなさい!」
敏夫「芋アメのおばちゃん 来とんねん!」
勉「どうも。 そうや 何や 猫ついてきよったで。」
敏夫「猫!?」
博子「見たい!」
勉「行く?」
敏夫「どこ?」
勉「ちょ… ちょっと待て。」
安子「あ… あの…。」
澄子「何や 悪いねえ。」
安子「休ませてもろうたお礼です。」
澄子「すぐに ごはんにするさかい あんたも食べていき。」
安子「そんな。 どこのうちも 乏しい配給で やりくりしょおるのに。」
澄子「ほっそい体して 小さい子 背負うて…。」
安子「しゃあけど…。」
澄子「ええから そうしい。 子供らも うちの人も ふかしまんじゅうより あんたの芋アメの方が喜ぶねんから。 ラジオの『英語会話』聴いとったんか? うちの外で。」
安子「はい。 すみませんでした 無断で…。」
澄子「いや それは 構へん。 そやけど 毎日毎日 芋アメ売り歩いて 疲れるやろうに あないなとこ 突っ立って。」
安子「英語…。 英語の勉強は もうやめよう思うてました。 亡うなった夫との思い出が詰まっとるから つろうて…。 しゃあけど あの… 『COME COME EVERYBODY』いう曲が 流れてきた時 聴き入ってしもうた。」