るい『貧しい画家らしい彼は もっといいパンを買いたくても 買えないんだわ。 でも 包みに パイやマフィンを忍ばせたりしたら 彼のプライドを傷つける。 ある日 ミス・マーサは とっさに思いついて… 男性のパンに そっそりバターを塗りました』。
るい「ミス・マーサは その日 ずっとドキドキして過ごします。 男性が パンをかじって 自分の ちょっとした いたずらに 気付いた瞬間のことを想像して…。 彼は驚いて それから バターを塗った人のことを 考えてくれるかしらって。 でも…。」
『このおせっかいの老いぼれ猫! お前のせいで 何もかもが台なしだ!』
るい「彼は 建築の製図を描いている人で 古いパンは 食べるんじゃなくて その消しゴムとして使われてたんです。 3か月かけて描いた製図が 最後の最後に バターのせいで台なしになった。」
るい『そう聞かされたミス・マーサは 青い水玉のブラウスを脱ぎ また古いサージに着替えました』。
るい「おしまい。」
(拍手)
るい「あっ 嫌じゃ 私… 一人で入り込んでしもうて。」
片桐「ハハッ。 いや 面白いなあ。」
るい「はい。 本当におもしれえ お話で。」
片桐「あっ いや そうやなくて あなたが。」
るい「えっ?」
片桐「そんな皮肉な話を お気に入りやて言えるあなたが 面白いと 僕は思います。 せやけど ミス・マーサは その客に訴えられるかもしれんなあ。」
るい「えっ?」
片桐「損害賠償請求をされる可能性はある。」
るい「フフッ そねん感想を持つたあ 片桐さんの方が よっぽど おもしれえわ。」
片桐「ハハハッ そうか? そしたら これ。」
るい「ちょうど頂きます。」
片桐「ありがとう。」
るい「ありがとうございました。 いけん。 ポケットに何か入ったままじゃ…。」
和子「何か 大事なもんか?」
るい「あ… い… いいえ…。」