錠一郎「けど…。 その時の僕には見えてた。 ひなたの道が。 これから自分が歩いていく道は サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート 明るい光に照らされてる。 そんな予感で いっぱいやった。」
るい「いつごろのことですか?」
錠一郎「あんまり覚えてない。」
るい「どこで聴いたんかも?」
錠一郎「進駐軍クラブ。 岡山の。 もしかして サッチモちゃんも おったんかなと思って。 あのころの岡山に。」
回想
るい「どねんしたん? これ。」
安子「進駐軍さんから もろうたんじゃ。」
るい「進駐軍さん?」
回想終了
錠一郎「溶けるよ。」
竹村クリーニング店
和子「何してんのん。」
平助「あ… いや… 冷たいもんでもと思てな。」
和子「邪魔したりなや。」
平助「いや そうかて…。」
庭
るい「私ゃあ… 私ゃあ レコードでした。 岡山の喫茶店で聴いたレコード。 小せえ頃 何回か連れてかれました。」
錠一郎「誰に?」
るい「ずっと… 忘れとりました。 しゃあけど サマーフェスティバルで 大月さんのトランペット聴いて… 急に よみがえりました。」
回想
♬『I used to walk in the shade』
安子「お父さんとお母さんの 大切な歌じゃ。 また ひなたの道を見つけて 歩いていこうね。 るい。」
回想終了
錠一郎「お母さん?」
るい「私の名前は 父が付けたんじゃそうです。」
回想
安子「アメリカの ルイ・アームストロングいう人から 名前をもろたんじゃ。」
るい「ルイ・アームストロング?」
安子「トランペット吹きょうる人じゃ。」
回想終了
錠一郎「やっぱり サッチモのルイやったんや。」
るい「『ひなたの道を見つけて 歩いていこうね。 るい』。 母は そう言うたんです。 『On the sunny side of the Street』を 聴きながら。 せえのに… せえのに 母は… 私ゅう捨てました。 進駐軍さんと恋をして…。」
回想
ロバート「I love you.(愛してます)」
安子「Thank you.(ありがとう) I’m glad.(うれしい)」
回想終了