一子「私も食べてみたけどな 回転焼きと たい焼きは似て非なるもんやわ。」
るい「そうなん?」
一子「回転焼きは こう… ふんわりしてるやろ?」
るい「うん。」
一子「たい焼きはな 何て言うか こう… 皮がパリッとしてて その口当たりが絶妙なんえ。 あれはあれで おいしいわ。」
るい「どないしよ…。」
一子「あんたなあ こないな あんこ作れるんやから もっと本格的な和菓子屋さんしたら? 1個60円の回転焼き作ってるより もうかると思うけど。」
<それは るいも何度も考えたことでした。 けれど 商売の手を広げる気には どうしてもなれませんでした>
回想
るい「はい どうぞ。」
「ありがとう。 るいちゃん。」
安子「ご苦労さまでした。」
回想終了
<つつましく暮らせれば それでいい。 その時が一番幸せなのだ。 るいは 心のどこかで いつも そう思っていました>
居間
ひなた「明けましておめでとうございます。」
錠一郎「はい おめでとう。」
るい「ひなた おめでとう。」
ひなた「うん。」
(笑い声)
錠一郎「るい。」
るい「はいはい。 じゃあ お父ちゃんから。」
錠一郎「ひなた。」
ひなた「はい!」
錠一郎「はい お年玉。」
ひなた「お父ちゃん。 お母ちゃん。 ありがとう!」
広場
一恵「ひなちゃ~ん。」
ひなた「いっちゃ~ん。 あ~あ 今年も岩倉具視やった。 あ~!」
一恵「やった!」
ひなた「もう…! ううっ。 ん! えっ 何…?」
(笑い声)
ひなた「もう~。 まだ当分 空き瓶拾わんとあかんわ。」
一恵「若い身空で大変やなあ。」
小夜子「頑張って。 ひなちゃん。」
ひなた「うん。 ありがとう。」
小夜子「さっ やろやろ。 ねっ。」
一恵「うん。」
ひなた「あっ! いっちゃんと 小夜ちゃんも 行かへん?」
2人「えっ?」
ひなた「モモケンのサイン会!」
一恵「チャンバラ興味な~い。」
ひなた「あ… やっぱり。」
小夜子「私 行こかな。」
2人「えっ!」
小夜子「ひなちゃんが そないに夢中になる スターさんに会うてみたい。」
ひなた「ホンマに!?」
小夜子「うん。」
一恵「それやったら 私も行くわ。」
2人「えっ!」
一恵「3人で行こう。」
ひなた「うん! やった~! そやけど… ホンマにええの? 1,500円やで。」
一恵「おばあちゃんにもろたお年玉で行ける。」
小夜子「私も。」
ひなた「あ… へえ~。 うん そっか…。 ヘヘッ。」
小夜子「ほら やろう。」
一恵「うん。」
ひなた「うん。」
一恵「いくで。」
ひなた「うん! はっ!」
一恵「うわっ! もう…。」
ひなた「やった~!」