阿部「あ~ なるほどね。」
紀土「周りに気ぃ遣って 寝る時間削って 体調崩して 結果 パフォーマンス落ちるってさ まさに無能じゃん。」
阿部「ミワさん 何してるの?」
ミワ「あっ いや こうしたほうが 店員さん運びやすいかなって思って。」
阿部「え… 聞いてた? 今の話。」
春鹿「体裁のために気ぃ遣うのは 無能って話。」
紀土「ヤバい ヤバい 天然すぎるわ。」
阿部「しかもミワさん 腕時計してる。」
春鹿「ヤバい ヤバい。」
(笑い声)
<えっ 何 この つらい飲み会…>
紀土「ヤバい ヤバい これ以上はやめてあげよう。 なっ。」
春鹿「紀土ちんとマジでキャラ逆だよね。 ミワさんて。」
阿部「よく それで つきあってたよね。」
紀土「まあ つきあったっていっても ちょっとだけな。」
<うん つきあってたっていうか…>
回想
紀土「マジ ビビんなよ。」
阿部 春鹿「何 何?」
紀土「俺 ミワと つきあうことにしたわ。」
阿部「ええっ!?」
春鹿「えっ!? えっ 何で?」
回想終了
<私が告白の返事を曖昧にしている間に いつの間にか つきあっていることに なっていただけだ>
紀土「で 何で腕時計してんの?」
春鹿「ちょっと やめなって。」
阿部「紀土ちん!」
<ああ… 早く帰りたい>
紀土「昔は バイト終わりに こうやって よく飲んだよな。」
春鹿「紀土ちん あのころは役者の卵だったね~。」
阿部「何で役者やめたの? いいとこまで いってたんじゃなかったっけ?」
紀土「役者で最も必要なスキルって 何だと思う?」
阿部「演技力じゃねえの?」
紀土「運だよ 運。」
春鹿「ちょっと待って 動画撮る。」
<運? それだけじゃないと思うけど>
春鹿「回りました。」
阿部「よ~い…。」
(たたく音)
春鹿「紀土さん それって どういうことですか?」
紀土「役者なんて コネとか事務所の力とか 自分の力じゃ どうにもできない ギャンブル要素がほとんどなんだよ。」
阿部「そうなんだ。」
紀土「人生をかけた仕事がギャンブルって ありえないよね。」
春鹿「確かに そうですね。」
紀土「演技力なんてものは ある程度やったら身につくしさ トップ俳優っていわれてるやつでも 技術的には俺と大差ないよ。」
<いや それは…>
阿部「ミワさん どうしたの? すげえ静かだけど。」
ミワ「いや 何でもない…。」
紀土「ムカついてんだろ?」
春鹿「えっ 何で何で?」
紀土「自分の好きな世界のことディスられて 面白くないんだろ?」
ミワ「いや…。」
紀土「だって こないだも ミワの好きな八海 崇のこと ちょっとディスったら ブチギレて帰ったし。 なっ。 俺はさ ミワのことが心配で言ってんだよ。」
ミワ「心配?」
紀土「映画が好きってのは分かるけどさ いい大人が 生活費 全部 趣味につぎ込むって ちょっと異常だよね。」
<我慢・・・ こんな挑発に乗ってはいけない>
紀土「メディアに洗脳されてんだよ。 しかも好きな俳優をけなされて帰るって 子どもじゃないんだからさ。」
ミワ「そういや こないだ紀土くん 腕時計してたよね。」
回想
法律で決まってるわけじゃ ないですよね?」
回想終了
紀土「は? 何 いきなり。」
ミワ「腕時計してる人は無能なんでしょ? 飲んだのって10日前ぐらいだよね。 そんな急に考えって変わるもの?」
阿部「ミワさん…。」
ミワ「どうせ ネットの動画にでも 影響受けたんじゃないの? それって メディアに洗脳されてない?」
紀土「言いたいのは それだけかよ。」
ミワ「え?」
紀土「実際に 俺は今 腕時計してないし 稼いでるし 社会に貢献してんだよ。 腕時計してるお前は今 何してる? 何してんのか言えないのか? 言えるもんなら言ってみろよ。」
ミワ「帰る。」
阿部「あ…。」
紀土「ミワちゃん!」
阿部「お会計お願いします。」
道中
紀土「ミワちゃん! ミワちゃんってば!」
八海「ミワさん。」