夜ドラ「ミワさんなりすます」(第13回)

阿部「あ~ なるほどね。」

紀土「周りに気ぃ遣って 寝る時間削って 体調崩して 結果 パフォーマンス落ちるってさ まさに無能じゃん。」

阿部「ミワさん 何してるの?」

ミワ「あっ いや こうしたほうが 店員さん運びやすいかなって思って。」

阿部「え… 聞いてた? 今の話。」

春鹿「体裁のために気ぃ遣うのは 無能って話。」

紀土「ヤバい ヤバい 天然すぎるわ。」

阿部「しかもミワさん 腕時計してる。」

春鹿「ヤバい ヤバい。」

(笑い声)

<えっ 何 この つらい飲み会…>

紀土「ヤバい ヤバい これ以上はやめてあげよう。 なっ。」

春鹿「紀土ちんとマジでキャラ逆だよね。 ミワさんて。」

阿部「よく それで つきあってたよね。」

紀土「まあ つきあったっていっても ちょっとだけな。」

<うん つきあってたっていうか…>

回想

紀土「マジ ビビんなよ。」

阿部 春鹿「何 何?」

紀土「俺 ミワと つきあうことにしたわ。」

阿部「ええっ!?」

春鹿「えっ!? えっ 何で?」

回想終了

<私が告白の返事を曖昧にしている間に いつの間にか つきあっていることに なっていただけだ>

紀土「で 何で腕時計してんの?」

春鹿「ちょっと やめなって。」

阿部「紀土ちん!」

<ああ… 早く帰りたい>

紀土「昔は バイト終わりに こうやって よく飲んだよな。」

春鹿「紀土ちん あのころは役者の卵だったね~。」

阿部「何で役者やめたの? いいとこまで いってたんじゃなかったっけ?」

紀土「役者で最も必要なスキルって 何だと思う?」

阿部「演技力じゃねえの?」

紀土「運だよ 運。」

春鹿「ちょっと待って 動画撮る。」

<運? それだけじゃないと思うけど>

春鹿「回りました。」

阿部「よ~い…。」

(たたく音)

春鹿「紀土さん それって どういうことですか?」

紀土「役者なんて コネとか事務所の力とか 自分の力じゃ どうにもできない ギャンブル要素がほとんどなんだよ。」

阿部「そうなんだ。」

紀土「人生をかけた仕事がギャンブルって ありえないよね。」

春鹿「確かに そうですね。」

紀土「演技力なんてものは ある程度やったら身につくしさ トップ俳優っていわれてるやつでも 技術的には俺と大差ないよ。」

<いや それは…>

阿部「ミワさん どうしたの? すげえ静かだけど。」

ミワ「いや 何でもない…。」

紀土「ムカついてんだろ?」

春鹿「えっ 何で何で?」

紀土「自分の好きな世界のことディスられて 面白くないんだろ?」

ミワ「いや…。」

紀土「だって こないだも ミワの好きな八海 崇のこと ちょっとディスったら ブチギレて帰ったし。 なっ。 俺はさ ミワのことが心配で言ってんだよ。」

ミワ「心配?」

紀土「映画が好きってのは分かるけどさ いい大人が 生活費 全部 趣味につぎ込むって ちょっと異常だよね。」

<我慢・・・ こんな挑発に乗ってはいけない>

紀土「メディアに洗脳されてんだよ。 しかも好きな俳優をけなされて帰るって 子どもじゃないんだからさ。」

ミワ「そういや こないだ紀土くん 腕時計してたよね。」

回想

法律で決まってるわけじゃ ないですよね?」

回想終了

紀土「は? 何 いきなり。」

ミワ「腕時計してる人は無能なんでしょ? 飲んだのって10日前ぐらいだよね。 そんな急に考えって変わるもの?」

阿部「ミワさん…。」

ミワ「どうせ ネットの動画にでも 影響受けたんじゃないの? それって メディアに洗脳されてない?」

紀土「言いたいのは それだけかよ。」

ミワ「え?」

紀土「実際に 俺は今 腕時計してないし 稼いでるし 社会に貢献してんだよ。 腕時計してるお前は今 何してる? 何してんのか言えないのか? 言えるもんなら言ってみろよ。」

ミワ「帰る。」

阿部「あ…。」

紀土「ミワちゃん!」

阿部「お会計お願いします。」

道中

紀土「ミワちゃん! ミワちゃんってば!」

八海「ミワさん。」

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