玄関
越乃「はい ありがとう。」
八海「お忙しいところ ありがとうございました。」
越乃「いえ はっちゃんのためなら いつでも。」
八海「また 映画の話をしましょう。」
越乃「うん。 この先の仕事は いつまで決まってんの?」
八海「ああ… まだ来年以降は決めてないです。」
越乃「えっ 一つも?」
八海「ええ…。」
越乃「あっ やだ。 私 ヤバいこと聞いちゃった? (小声で)ちょ… これはNGね。 ダメだよ。 分かった? 分かった? じゃあ また飲みましょう。」
八海「お疲れさまでした。」
越乃「は~い。 じゃあ またね。」
八海「ありがとうございます。」
越乃「は~い。 バイバイ。」
キッチン
池月「八海さんがアメリカに行ってたとか 知らなかった。」
ミワ「アメリカで修業積んでる時に シラー監督に出会って そこで作った映画が 『コーヒー&ブルース』なんです。」
池月「へえ~ そこでブレークしたんだ?」
ミワ「はい。」
池月「まずは アメリかで評価されて そこから 日本でも 八海 崇の名前が広がって 東京ロマンス三部作につながるっていう。」
池月「そうなんだ。」
ミワ「はい。」
一駒「ミワさんって 本当に詳しいですね。」
ミワ「あ…。」
<まずい 調子に乗りすぎた>
ミワ「今回 密着取材ということで ちょっと調べたんです。」
一駒「ファンなんでしょ?」
ミワ「あっ えっと…。」
一駒「熱烈な八海 崇ファンなんでしょ?」
池月「あっ やっぱり そうなんだ。」
ミワ「えっ…。」
一駒「いいのよ 私たちには隠さなくても。 藤浦さんの前では気を付けて。」
ミワ「はい 気を付けます…。」
(オーブンの音)
ミワ「あっ 私 出します。」
<一駒さん… 私のことを ほぼ見抜いた上で それでいて 的確なアドバイスをくれる。 ありがたき存在>
スタッフ「すいません。 インタビューが終わったので このあと少しだけ 家政婦さんのお仕事も カメラ回していいですか?」
池月「はい。」
一駒「構いませぬが。」
ミワ「えっ カメラ…。」
ナレーション『美羽さくらさんは たとえ意味がなくても ニンジンの花の形に切る。 これぞ 家政婦のプロフェッショナルである』
<まずいまずい テロップで名前が出たら 他人になりすましていることが バレてしまう。 映ってはいけない>
ミワ「すいません! 私 あの ちょっと 片づけ行ってきます!」
スタッフ「こっちは もう終わった状態なんですか。」
リビング
ミワ「失礼しま~す。」
スタッフ「ねっ 一応 これ撮っといて。」
カメラマン「分かりました。」
ミワ「失礼しま~す!」
スタッフ「一応 空でも おさえとこうか。」