廊下
スタッフ「越乃さん スタンバイされてます。」
八海「映画について話せばいいですか?」
スタッフ「そうですね。 最初にお二人が 共演された作品のことから。」
八海「分かりました。 はい。」
スタッフ「お願いします。」
リビング
越乃「ありがとうございます。」
八海「越乃さん おはようございます。 今日は ありがとうございます。」
越乃「おはようございます。 いえ 今日は はっちゃんとのおしゃべりを 楽しみに来ました。」
八海「はい。」
池月「やっぱり カメラの前だと さすが俳優って感じね。」
ミワ「ですね。」
一駒「さあ 紅茶の準備をしましょう。」
2人「はい。」
八海「私がデビューしたのが…。」
ナレーション『八海が 俳優のキャリアをスタートさせたのは 今から35年前に公開された 映画「紅の桜」。 主演は越乃彩梅。 八海はまだ 端役だった』
越乃「懐かしいわね。 でも はっちゃんはさ 若手の中でも 一人だけ全然違ったんだよね。」
八海「え?」
越乃「監督に言われたことを 絶対にやらなかったの。 倒れろって言われてんのに 立ったまんまだったり 殴れって言われてんのに 殴らなかったり。
八海「ひどいですね。」
越乃「わざとやってんのか 頑張ってもできないのか どっちだか分かんなかったよね。」
八海「多分 できなかったんだど思います。」
越乃「できなかった?」
八海「ええ。」
<この話 貴重すぎる…>
越乃「デビューしても なかなか芽が出なかったもんね。」
八海「ええ。 まあ 今考えたら 当然だと思いますけど 当時は かなり悩んでましたね。」
越乃「飲むたんびに 役者やめたいって言ってたもんね。」
八海「ええ。」
越乃「あっ やっぱり変わったのは アメリカに行ってから?」
八海「う~ん そうですね。」
越乃「よく一人で 海外に飛び込もうと思ったよね。 はっちゃんは そこが偉いと思う!」
八海「えっ 越乃さんが勧めたんですよ。」
越乃「えっ? ウソ 私が!?」
八海「任侠映画より 向こうの映画のほうが 合うんじゃないかって 越乃さんが言ってくれたんです。」
越乃「私が そんなこと言ったの? いや ごめん 全然覚えてない。」
八海「待って下さいよ。 私は あなたが言うから行ったんですよ。 何のプランもなしに。」
<ああ 越乃サマ… 八海サマを正しく導いて下さり ありがとうございます>
池月「そろそろ ランチの準備。 ミワさん。 ミワさん。」
ミワ「あっ はい 承知しました。」
(ぶつける音)
ミワ「すいませんでした。」
越乃「私 本当に言ったのかな?」
八海「もちろん。」
越乃「何で私 そんなこと言ったんだろう。」
(八海と越乃の笑い声)