山田家
タミ「干し草にするのって 大変なことなんだねえ。 お天気まで読んで。」
なつ「じいちゃんは 天気を読むのが名人だから。 牛飼いにとって 草刈は大事だも。」
タミ「そだね。」
天陽「なっちゃん これ。」
なつ「なしたの?」
天陽「なっちゃんに あげるわ。」
なつ「えっ?」
天陽「うちは 柴田さんには 何も お返しなんてできないから せめて なっちゃんに。」
なつ「いいよ そんなの! 困るよね? じいちゃん。」
泰樹「うん…。」
天陽「いや そでない。 別に うちが 無理して買ったわけじゃない。 東京の兄ちゃんから送られてきた。」
なつ「陽平さんから?」
天陽「うん。」
タミ「そうなの。」
天陽「なっちゃんにって。」
なつ「ふ~ん… 本当にいいの?」
天陽「いいんだよ。」
泰樹「なつは… 絵を描きたかったのか?」
なつ「うん…。 天陽君みたいに うまくはないけど。 舞台で見たでしょ? 天陽君の絵。」
泰樹「ああ。」
なつ「私も 絵を描くことは好きなんだわ。 天陽君みたいに 絵で 自由に 何か表現できたら どんなにいいだろうって思うさ。 うれしい…! ハハハ…。」
道中
泰樹「おい なつ。」
なつ「何? じいちゃん。」
泰樹「言ってもいいか?」
なつ「えっ… じいちゃんまで…? どうぞ。」
泰樹「お前を 天陽とは 一緒にさせられん言ったら どうする?」
なつ「えっ? 何なの? 突然。」
泰樹「天陽が うちの婿になるんなら別だが…。 なつには 将来 わしの牧場を継いでもらいたい。」
なつ「うちには 照男兄ちゃんいるし…。」
泰樹「照男だけでは支えきれん。 いずれ バター工場も造りたいしな。」
なつ「バターか…。」
泰樹「それが嫌なら はっきり言ってほしい。 お前の意志を 無視する気はない。 無理強いはせん。」
なつ「急に そんなこと言われても…。 じいちゃん 私と天陽君は そんな仲じゃないから。」
泰樹「そうか。 それなら 安心した。」