亜矢美「詩人になるか 死人になるかだね ここじゃ。」
「アッハハ…。」
「そのとおり ハハハ…。」
なつ「あの お兄ちゃんは?」
亜矢美「ううん あいつはね 詩人だか 死人なんだか分かんない。」
なつ「あっ いや いますか?」
亜矢美「あっ まだだから 座って待ってなさい。」
茂木「はい 座んな 座んな。 ほら来た。」
なつ「お兄ちゃん!」
咲太郎「おう なつ! 何だ ここにいたのか。 今 お前んところ 行ったんだぞ。」
なつ「えっ?」
咲太郎「東洋の試験 今日だったろ? どうだった? 受かったのか?」
なつ「いや 結果は まだ。」
亜矢美「そんな すぎに出ないだろうよ。」
咲太郎「んだよ もったいぶりやがって。 役者を見るより 絵の方が早いだろ。」
亜矢美「そういう問題じゃないの。 一流の会社さんなんだから。」
なつ「でも 陽平さんから もらった本が 役に立ったの。 あっ 社長の書店で買った 外国の本なんです。」
茂木「おお そうかい。」
なつ「動物の動きが 連続写真で よく分かるもので そしたら 本当に動物の動きが 試験に出たんです。」
咲太郎「何だよ 初めに答えを 教えてもらったようなもんじゃないか。」
なつ「違うって! 写真を見たって そのまま描けばいいわけじゃ ないんだから。 実際の馬を いくら見てたって 動画を描くのは 難しいの。 基礎を勉強しといて いかったってこと。」
茂木「うちの書店も お役に立ててよかった。」
咲太郎「じゃ 自信があるんだな?」
なつ「ん~…。 うん。 ある!」
茂木「おや!」
なつ「いや 大丈夫だと思う。 精いっぱい やったから。」
咲太郎「よし。」
亜矢美「じゃあ 乾杯しましょうか。」
咲太郎「おっ いいね!」
なつ「飲めませんけど… ありがとうございます。」
茂木「よ~く頑張った…。」
<なつは 咲太郎に会って 少しだけ 気持ちが軽くなったような気がしました。」
一同「かんぱ~い!」
川村屋
厨房
佐知子「洗い物 お願いします。」
なつ「はい。」
<それからのひとつき どんなに忙しくても なつには とても長く感じられました。>
社員寮
<そして それは届いたのです。>
<なつよ… 無念。>