なつ「そりゃあさ 自信があったわけじゃないけど 絵のことだって 何も知らないし 美術の大学も出てないし。 けど… 私にもできるって言われて それを 真に受けて… それしか 考えられなくなってたんだわ。 バカだよね。」
咲太郎「お前 面接は受けたよな?」
なつ「えっ? 受けたよ。」
咲太郎「誰に?」
なつ「誰にって… 大杉社長とか…。」
咲太郎「いたのか? 大杉社長も? お前に気付いてたか?」
なつ「えっ どういうこと?」
咲太郎「いや… お前 自分の名前は言ったんだろ?」
なつ「当たり前しょ。」
咲太郎「そうだよな… 何か聞かれなかったか?」
なつ「えっ?」
回想
大杉「アータ ご両親は ご健在かね?」
なつ「はい。 本当の両親は 戦争で亡くしました。」
山川「いわゆる 君は 戦災孤児だということですか?」
なつ「はい…。」
大杉「もう結構です。」
回想終了
なつ「何も…。 普通だよ。」
咲太郎「そうか…。」
なつ「絵が ダメだったんだ…。 実力が なかったんだよ…。」
東洋動画スタジオ
作画課
(チャイム)
中庭
仲「お疲れさま。 お疲れさま。」
「お疲れさまです。」
「お疲れさまです。」
仲「お疲れさま。」
「よかったら どうぞ。
仲「ありがとう。」
仲「あっ あなたは…。」
咲太郎「先日 川村屋でお会いした 奥原なつの兄です。 奥原咲太郎です。」
仲「こんにちは。 いや あの… どうかしたんですか? なっちゃん。」
咲太郎「どうして なつは落ちたんでしょうか?」
仲「えっ!?」
咲太郎「なつには 実力がなかったんでしょうか? どうなんでしょうか!」
<咲太郎よ 気持ちは分かるが そこまで聞きに行くのは どうなんでしょうか…。>