仕上課
富子「奥原さん どうだった?」
なつ「はい すいません。 ちゃんと謝ってきました。」
富子「あなた どういうつもりなの? 勝手に 動画を持ち出して。」
なつ「私は ただ 動画の勉強がしたくて…。」
富子「仕上は やりたくないというわけじゃ ないでしょうね?」
なつ「そんなことありません。」
富子「だったら 今は彩色の仕事に集中しなさい。」
なつ「はい。 すいませんでした。」
桃代「大丈夫?」
なつ「はい。」
桃代「ただの塗り絵かと思ってたけど そうじゃないのよね これも。」
なつ「えっ?」
桃代「私も ちゃんと動画映画のことを 勉強したいと思えてきたわ あなたを見て。 だって 楽しそうなんだもの。」
なつ「楽しいですよ! 私も 今日 初めて その楽しさが 少し 分かったような気がしたんです。」
桃代「今日? 何があったの?」
なつ「いや… 今は 彩色に集中しないと。」
桃代「私 子どもの頃から 絵を見るのも描くのも好きだったのよね。 普通の高校で 美術部でもなかったんだけど…。 だから 絵を仕事にできるなんて 思ってなくて。」
なつ「絵を仕事にしてるじゃないですか。」
桃代「そうなのよね… してるのよね。 だったら 自分にも もっと 何か できることがあるのかなって…。」
なつ「ありますよ。 モモッチさんは そんなに上手じゃないですか。 楽しさに限りはないと思うんですよ どんなことでも。 ただ… 自分に それを求めるかどうかの違いで。 だって 日本のアニメーションは まだ始まったばっかりなんですよ。」
桃代「あなた 自分のやりたいことに対しては 割と ずうずうしいのね。」
なつ「はい。 そういうとこ 開拓者のじいちゃんに鍛えられたんです。 やるとなったら もうやるしかないしょ。 ああ…。」
桃代「ちょっと 何やってんのよ!」