所長室
仲「どうですか? 露木さん。」
露木「ん? うん いや いいと思うよ。 けどね 演出の立場から 言わせてもらいうと 演出や原画に指示されてないことを 動画の子が 勝手に描くっていうのは どうなんだろうな。 こういうことを許したら 悪い前例にもなりかねない。」
仲「いや しかし 原画を 2人でこなしてる以上 実際 手が回らなくなることもありますよ。 そこを 動画に 補ってもらうことがあっても しかたがないんじゃないですか?」
山川「人手不足は分かるけどさ だからといって 仕上に入ったばかりの子を そうすぐに 作画に移すというのはね…。」
仲「もともと 彼女は 6月のアニメーターの試験に 受かってたはずなんです。」
井戸原「大杉社長に反対されたんだろ?」
仲「いや それは誤解されただけですよ。 身内に 変な人がいるって…。 でも その誤解は解けたんです。」
山川「解けてはいないよ。 仕上に入れる時に 大杉社長に お伺いを立てたけど 社長は 見事に そのことを忘れていただけだ。」
仲「それなら そのまま 忘れていてもらいましょう。」
山川「しかし この絵は ほかの人が クリーンナップしたんだろ?」
井戸原「はい 僕の下の堀内君が。 彼女の描いた絵は こっちのラフです。」
露木「あっ ちょっと貸して 見して。 はいはい…。 えっ… これがラフかい…。 まるで素人の絵じゃないかよ。」
仲「絵のうまい下手なんて 描いていくうちに 上達しない人はいませんよ。 だけど センスは… まして 十九 二十歳の感性は 今しか使えないものでしょう。 彼女を 今から鍛えれば どこまで伸びるか分からないと 僕は思うんですよ。」
露木「仲ちゃんが そこまで言うのなら どうだろう? こうしたら もう一度 試験を受けてもらうんだよ。」
仲「えっ?」
<そして その翌日の昼休みです。>
喫茶店・リボン
<なつは 仲さんに呼ばれて ランチをごちそうになりました。>
仲「君を もう一度 試験しようと思っている。」
なつ「えっ?」
仲「社内部の試験だ。 それに受かったら 君を アニメーターにする。 どうする?」
なつ「やります。 やらせて下さい!」
<なつよ… まずは 口を拭け。>