連続テレビ小説「なつぞら」第74話「なつよ、“雪月”が大ピンチ」【第13週】

1階居間

雪之助「申し訳ないが 川村屋が開くまで ここに いさせて頂けますか?」

亜矢美「いくらでも どうぞ。 狭っ苦しくて すんません…。」

妙子「なっちゃんは 仕事 大丈夫なの? ほら やっと やりたい仕事に就けたでしょや。」

なつ「今日は日曜日だから 大丈夫。」

妙子「あっ そっか… 日曜日か。」

なつ「3人で来て大丈夫なの? 雪月は。」

雪之助「それどころじゃないからね。」

なつ「あ…。」

妙子「思い切って 3人で来たんだわ 雪次郎さ会いに。 お店閉めて。」

とよ「事によると 永久に閉めることに なるかもしれないからね。」

なつ「そんな…。」

亜矢美「あら やだ 私 お茶も出さないで…。 朝ごはん まだですよね?」

妙子「もう どうぞ お構いなく。 食欲もありませんから。 弁当も 夜行列車で食べてきたんで…。 あっ… そうだ あんた それ…。」

雪之助「ああ ハハハハ…。 あの これ つまらないものですが どうぞ。」

亜矢美「あ… お土産なんて そんなもの結構ですよ。」

雪之助「そんなもの? あ… せん越ですが 土産は そんなものではありません。 これでも 一応 十勝の銘菓です。」

なつ「雪月のバター煎餅。 おじさんの魂のお菓子。」

亜矢美「魂…。 まあ それは それは 結構なものを… ありがたく頂戴いたします。」

妙子「どうぞ。」

亜矢美「じゃ 粗茶だけでも…。」

なつ「あっ 私も行く。」

咲太郎「えっ…。」

1階店舗

なつ「すいません。」

亜矢美「大丈夫 大丈夫。 あっ… こっちがいいか。」

なつ「ダメだって! おじさん酔わしたら どうなるか…。」

亜矢美「そうだね。」

なつ「お茶で。」

1階居間

雪之助「それで あいつは あなたのいる劇団を受けたんだね?」

咲太郎「はい。」

雪之助「あなたが誘ったのかい?」

咲太郎「違いますよ。 けど… そんなに いけないことですか?」

雪之助「えっ?」

咲太郎「雪次郎が夢を追っちゃ そんなに いけないんですかね? あ… 店が大事なのも分かりますが 雪次郎の夢だって大事じゃないですか?」

とよ「夢を追うのはいいけどね。 それが幻だったらどうすんの?」

咲太郎「幻でも いいじゃないですか。 夢か幻か 追ってみなければ分かりません。」

とよ「へえ~ 立派なこと言うね。」

咲太郎「いや それほどでも…。」

とよ「褒めてないわ。」

咲太郎「えっ?」

とよ「そんじゃ 誰でも 雪山に登ってみなけりゃ 登れるか死ぬかも 分からんと言ってんのと同じだべさ。」

妙子「お義母さん それは ちょっと極端でしょ。」

とよ「そんなことないべ。 食えなきゃ死ぬべ。」

雪之助「雪次郎はね 菓子職人になるっていう ちゃんとした夢があったんだ。」

咲太郎「だから それを 本人が 幻だと思ったんでしょ。 しょせんは 親の決めた夢だって。」

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