雪月
一同「『十勝男自慢コンテスト』?」
良子「何なのさ このはんかくさい催しは…。」
妙子「うちの人 うれしそうに ビラまいてたわ。」
夕見子「男自慢って こんなの ただの自己満足でないの。 気持悪いったらありゃしない。」
とよ「『女たちよ これが十勝男児だ!』。」
(悲鳴)
夕見子「なんという ナルシシズム…。」
良子「『女たちよ』って 私たちに抗議してるつもりかい?」
砂良「だとしたら 的外れもいいとこよ。 うん? 腕相撲に 集乳缶重量挙げ 牛と綱引き…。」
とよ「あんたら バカにされてんでないのかい。」
砂良「あっ そうだ! 聞いて下さいよ。 この間 洗濯してたら 上着のポケットから 変な名刺が出てきたんです!」
一同「え~!」
砂良「あれは多分 女の子のいるお店のやつだわ。」
照男「妹として情けないわ。」
良子「うちの旦那も 毎晩 飲み歩いてばっかりさ。 その上 今度 トラクターを買うんだとか 言い出して… どこに そんな金があんのさ!」
妙子「何か 腹立ってきた! こんな悪ふざけ やめさせないばなんないね!」
夕見子「いやいやいや それじゃ 腹の虫が治まんないわ。 どうにか 一泡吹かせらんないべか。」
公英「こんにちは。」
夕見子「あっ いらっしゃい… ああ 公英ちゃん いらっしゃい。 久しぶりだね。」
公英「うん。」
夕見子「あっ ちょっと待って…。 ちょっと いいこと思いついた。」
戸村家
秘密基地
雪次郎「うっ…。」
菊介「よ~し やってんな。 みんな 俺たちの新しい仲間だ。」
正治「何だか よく分からねえが 心配かけてた家族に 元気な姿を見せたいと思う。」
雪之助「よろしくな!」
菊介「おやじだ ハハハハ…。」
門倉「おっ おい た… 大変だ!」
雪次郎「どうしたんだ? 番長。」
門倉「良子に 俺たちが ここにいること ばれちまった…。」
菊介「え~!?」
門倉「早く片づけろ!」
夕見子「毎晩 どこ ほっつき歩いてんのかと 思ったら こんなとこにいたとはね。」
良子「あんたら ここで何してんのさ。」
門倉「練習だよ。 十勝男自慢コンテストの。」
夕見子「コンテストね… いいじゃないの。」
雪次郎「えっ?」
夕見子「そんなに やりたきゃ やってもらおうじゃない。 ただし! やるのは このコンテストだけどね。」
一同「『十勝女房自慢コンテスト』?」
門倉「何じゃ こりゃ!」
夕見子「『このコンテストは 男たちが 妻への愛を競い合うものである。 各人 好きな方法で 妻への愛をアピールし 妻に認められれば 男として正当に評価し 認められなければ 夫婦生活を 終了するものとする』。」
正治「夫婦生活を終了…?」
菊介「こんな理不尽なことがあるか! 一方的に別れるだ何だって!」
公英「あれ~? お母さんの心を つなぎ止める自信がないってことかい?」
菊介「そ… そんなことはねえけど。」
夕見子「妻への愛をアピールして より夫婦の絆が深まる。 大した すばらしいイベントだと思わない?」
良子「どうすんの? やるの! やらないの!」
菊介「いや みんな だまされるな! こんなの変だ!」
門倉「や… やります!」
菊介「番長 お前 勝手なこと言うんでねえよ!」
門倉「菊介先輩! これは 逆に チャンスかもしれねえ!」
菊介「チャンス?」
門倉「要は 女たちをメロメロにして 俺たちを見直させればいいんだべ? 男自慢コンテストと 目的は同じだべさ。」
照男「確かに 言われてみれば…。」
正治「菊介さん。 男には やらなきゃいけない時がある。 俺たちにとって 今が その時だ。」
菊介「山田さん…!」
雪之助「やるべ 菊介さん!」
照男「やろう 菊介さん!」
菊介「おお… おお おお…!」
夕見子「雪次郎 あんたは どうすんの?」
雪次郎「やってやるべ!」
菊介「よし 妻たちよ 見てれよ!」
菊介<うお~! ああ 失敬。 興奮しました。 さて 十勝で 男たちと 女房たちの戦いが始まったのと同じ頃… 剛男さんは 東京に来ていました>
坂場家
玄関
(ブザー)
坂場「は~い。 ああ お義父さん。 ご無沙汰してます。」
剛男「久しぶり。 急に泊めてもらって すまんね。」
坂場「いやいや お待ちしてました。 なつ!」
なつ「あっ 父さん! いらっしゃい。」
優「おじいちゃん いらっしゃい。」
剛男「優ちゃん おじいちゃん来たよ。」
なつ「長旅ご苦労さま。 疲れたしょ。 入って。」
剛男「お邪魔します。」
坂場「どうぞ どうぞ。」
剛男「ああ ありがとう。」
居間
剛男「はあ~ 旅の疲れがとれたわ。」
なつ「それは よかった。 それで どうだったの? 手紙 見つかったんでしょ。」
剛男「ああ うん。」
回想
(鈴の音)