夜
歌子「よかったね。」
優子「博夫さん 早く迎えに来てくれるといいね。」
良子「無理だと思う。」
歌子「どうして?」
優子「『俺も腹をくくる』って。」
良子「外面はいいけど 石川の家に帰ると…。 理想主義者って 案外 しんが弱いんだよね。」
優子「なら しばらく ここにいたらいいさぁ。」
良子「ありがとう。」
レストラン・フォンターナ
厨房
矢作「アルデンテ これでいいか?」
暢子「ん~ もう少しだけ ゆでた方が…。」
矢作「はっ? これ以上?」
暢子「すいません! じゃあ とりあえず そのままで。」
矢作「とりあえず? もう お客に出すんだぞ。」
暢子「あっ そうですよね。 ごめんなさい!」
玉島「盛りつけ こんな感じ?」
暢子「う~ん 何か もう一つ違うような…。」
玉島「違う?」
長山「どこが違うか指示してやれよ。 ったく もう…。」
山辺「暢子ちゃん 1番様のお料理 まだですか?」
暢子「えっ? アイヤー! すいません!」
山辺「1番様 後の用事があって急がれてる件 伝えてある?」
暢子「そうでした!」
矢作「邪魔!」
暢子「すいません! あの 1番様のパスタを 先にお願いします。」
矢作「はっ? 3番優先って言ったろ?」
暢子「すいません お客様のご都合があって。」
矢作「聞いてねえよ。」
暢子「すいません。」
矢作「それじゃ 仕事になんねえよな。」
暢子「すいません!」
ホール
笹森「入社5年目の若造が 編集局長に説教か?」
和彦「説教ではありません。 意見を述べているだけです。」
笹森「へ理屈をこねるな。 おい… おい 田良島。 お前んとこの 学芸部っつうのは あれだ。 ヒラの兵隊が 指揮官に説教垂れるのを 認めてるのか? ん?」
田良島「笹森さん 最後まで 話 聞いてくださいよ。」
厨房
山辺「暢子ちゃん!」
暢子「ん?」
山辺「ちょっと…。」
ホール
和彦「局長 何してるんですか!」
愛「やめてください!」
和彦「何するんですか! 放してください!」
(食器が落ちる音)
(悲鳴)
笹森「貴様… どういうことになるか 分かってんだろ…。」
暢子「大丈夫ですか?」
笹森「何だ お前は?」
暢子「この店の 責任者です。」
笹森「生意気な…。」
田良島「笹森さん… 局長!」
客「別の店 行こう。」
暢子「あっ 申し訳ございません。 すぐ ご用意しますから…。」
客「いや もういいです。 行こう。」
暢子「申し訳ございません。」