連続テレビ小説「ちむどんどん」72話「ウークイの夜」

嘉手刈金物店

嘉手刈「『がっかりしたくなくて 今まで一度も 蓋は開けられ』…。『でも これでやっと 本当の供養ができます』。『敬具』…。」

和彦「僕の父は 沖縄の部隊にいました。 米軍が攻めてくる前に転属になって 死なずに済みました。 父は もともと民族学者で 沖縄の文化をライフワークに 本を書こうとしていました。 僕も 子供の頃 まだ復帰前の沖縄で 父と暮らしたこともあります。」

和彦「父は 僕が中学生の頃に 急病で他界しました。 いずれは 父の果たせなかった思いも 引き継いで 沖縄について 僕なりの本を 必ず書きたいと思っています。 今回 お邪魔できたのは 上司の田良島の計らいです。」

嘉手刈「田良島さん?」

和彦「嘉手刈さんに 迷惑をかけてしまったと 言っていました。」

嘉手刈「そうか あんた 田良島さんの部下か…。 この 大城房子さんとは どこで?」

和彦「房子さんは 田良島が懇意にしている レストランの経営者で 僕も よくお世話になっています。」

嘉手刈「毎年 多くのお金を 寄付してくれている。 房子さんが 間に入ってくれたおかげで 掘り出せたものが 遺族の手に渡ったこともある。」

嘉手刈「これは 全部 本土の遺族の人からのね お礼の手紙さ。 届けてくれて ありがとうね。」

和彦「20年前 田良島は 一体どんな迷惑を。」

嘉手刈「わしの親戚や友人には いろんな立場の人がいてね。 うん あの戦争の話は もう 思い出したくもないという人もいるし アメリカ人相手と商売してね 生活をしてる人もいる。」

嘉手刈「私の所に 文句を言いに来た人もいるよ。『取材を受けなければよかった』って ひと言 田良島さんに言ったら それを 田良島さん ずっと 気にしてるわけさ。」

ツル「いらっしゃい。」

嘉手刈「今日は ウークイだ。 これも 何かの縁かもしれないね。」

嘉手刈「あの戦争で 人は 人でなくなることをした。 自分の子供に あの時のことを 話できない人が もう たくさんいるわけさ。 戦争経験者も どんどん死んで そのうち 誰もいなくなる。 なんとか 伝えなくちゃいかん。」

和彦「過去を知ることが 未来を生きるための第一歩だと思います。」

嘉手刈「あんた いい目してるよ。 田良島さんと 同じ目してる。 どうやったら 正しく伝えられるかどうか わしには 分からんけど もし あんたが それ 考えてくれるというんだったら わしは 何でも話すよ。」

和彦「一生かけて 考えます。 お約束します。」

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