一風館
入口
和也 恵里♪『ドは ドーナツのド レは レモンのレ ミは…』
和也「お母さん どうしたの?」
恵里「ん? ううん 何でもないよ。 さ 帰ろうか。 おなか すいたね。」
和也「うん。 柴田!」
恵里「は?」
古波蔵家
勝子「ん?」
ハナ「ん?」
2人「ん?」
一風館
マンデリン
恵里「何でもなかったのかなぁ。」
(ドアが開く)
文也「ただいま。」
恵里「お帰りなさい。」
文也「ああ もう 寝たか…。」
恵里「うん。」
文也「そっか…。 今日は どうしてた?」
恵里「和也? うん 保育園から帰ったら 私なんか ほったらかしで 柴田さんと遊んでたさ。」
文也「なんか やけちゃうんだよな 俺。 しょうがないけどな。 なかなか 一緒に 遊んでやれないから。 寂しいね。」
恵里「でも 柴田さんや 一風館の人が いてくれて ホント 助かってる…。 親以外に こんなに遊んでくれる人が このアパートだけで 何人もいるからさ。 いいことだよ やっぱり 和也にとってもさ。」
文也「そうだねぇ。」
恵里「保育園とかで見てても 和也は 人に慣れてるからかなぁ 人見知りとかしない この子 全然。」
文也「でも それは 恵里に似たのかもよ。」
恵里「え? そうかな。」
文也「少なくとも 俺じゃないね。」
恵里「そうかなぁ。」
文也「そうかじゃなくて 間違いなく そうだって。」
恵里「そうですか すみません。」
古波蔵家
恵文「(ため息)」
恵尚「だから オヤジさん 無理って!」
勝子「そうさぁ。」
恵文「そんなこと 言ったってよ。」
ハナ「情けないねぇ。」
恵文「何がよ。」
恵尚「だから 何がよ おばぁ。 オヤジさんは 悪くないさぁ。 交差点で とまってるところ 追突されたんだからよ。」
恵文「そうだよねえ 俺は 全然 悪くないよね。」
ハナ「車とめて 昼寝でも していたんだろ。」
恵文「何を言うか。 俺はね 大通りで 昼寝なんか しないさぁ。」
勝子「じゃ どこなら するわけ?」
恵文「いや だからよね。」
ハナ「(ため息)」
恵文「勝子! お酒!」
勝子「『お酒は駄目』って先生に言われた。 痛むんだよ お酒 飲むと…。」
恵文「もう 酒は飲めない 三線は弾けないじゃさ 俺は いったい 何をすればいい?」
恵尚「え? …ん?」
ハナ「ないさぁ。」
恵文「であるね。」
恵尚「じゃ 俺は 仕事 行ってこようか。 もう 営業主任に なってから 大変さぁ。 皆が 俺ばっかり 頼りにしてからよ。」
勝子「そうなの?」
恵尚「おう 島袋製作所は いまや 俺で 成り立ってるようなもんだよ。 うん。 ま しばらく オヤジさんも 働けないし 古波蔵家は 俺が 何とかしないと いけないさ。 参ったねぇ アハハハ。」
ハナ「行っておいでねぇ。」
勝子「行ってらっしゃい。」
恵文「行っといでねぇ。」
恵尚「うん 行ってきます。」
勝子「頑張ってるね 恵尚。」
ハナ「であるね やっぱり 頼りにされると いうことは いいもんだからねぇ。」
勝子「そうですねぇ。」
恵文「あ でもよ 勝子。」
勝子「何?」
恵文「東京の恵里や恵達に言ったらダメ。」
勝子「何を?」
恵文「いや 何って だから お父さんが ケガをした事 言ったら ダメだってことさ。」
勝子「ああ 言ってないさ。」
恵文「え? 言ってないの?」
勝子「は?」
恵文「いやいや それでいいわけ。 そんなこと しなくていいさ。 恵里や恵達や ましてや 和也なんかに 絶対に 言っちゃ ダメだよ。 心配で すぐに飛んできてしまうかも しれないからよ 絶対 絶対 絶対絶対 言っちゃ ダメだからね。」
ハナ「言わないさ ねえ 勝子さん。」
勝子「うん 言わない言わない 心配しないで。」
恵文「え? あ そうかねぇ。 アハハハ…。」