ゆがふ
兼城「遥ちゃん どうした? 元気ないね」
遥「あ… いえ」
兼城「今日は 1人? 一風館のみんなは?」
遥「多分 今日は 来ないと思います」
兼城「そうなわけね…」
遥「はい」
容子「こんばんは!」
兼城「あ いらっしゃい!」
遥「あっ?」
容子「あれっ 仕事だったんじゃ…?」
遥「あ… え~と はい もう 終わりました」
容子「あ そう… こっちも もう 終わりました」
遥「えっ?」
容子「ね?」
真理亜「うん」
遥「そうですか… 愛子ちゃん 先に 帰っちゃったんですか…」
容子「なんか 切ない話だよね あれ… 遥ちゃん なんか 元気ないよね」
遥「え? いえ ありがとうございます」
容子「え?」
遥「え? はぁ… 大丈夫です うん」
真理亜「悪くないよ… ね『どうしたの? 元気ないね』って 言われるのってさ」
容子「うん?」
真理亜「わるくないよ… ね」
遥「はい…」
真理亜「ま… 言いたい時に いいなよ」
遥「…はい」
容子「あ そうそう『つまんない』って 言われたんだよね この人… 書いた本『つまんない 全然 駄目だ 最低』もう…」
真理亜「そこまで 言ってないわよ」
容子「そうだっけ?」
兼城「すごいね そんな事 言ったわけ?」
真理亜「言ったわね フフフン」
遥「へえ なんか うれしそうですね」
真理亜「ま… 人の事は いいわよ それより 容子さん 大丈夫なの?」
容子「ええっ 私?」
真理亜「何もなさそうな顔してるけど どうなの?」
容子「まあね うん そりゃ 不安とか いっぱいあるよ 結構 高齢出産だったしね 子供 産むとさ 幸せだなと思う瞬間と不安で たまらなくなる瞬間… 交互っていうかさ 1分ごとっていうか やってくるんだよねえ」
真理亜「へえ~」
容子「あ ごめん 独身のあなたたちに『結婚』とか『子供 産んだほうが いいよ』とか 言うつもりないからね それ 分かってよね」
真理亜「うん」
遥「はい」
容子「でもさ 母っていうか 親になると 新しい発見があるのは 確かだね」
遥「ふ~ん」
容子「自分の親もさ 私の事 こんなふうに 見てたのかなと思うと なんか 不思議だったりとかねえ」
兼城「であるわけか…」
容子「うん」
兼城「…すみません」
容子「だってさ 男と女って 好きで一緒になったわけで 嫌いになったりするかも しれないでしょ でもさ 親のさ 子供への愛は 違うよね だってさ 柴田君 見てると思うんだけどさ あの愛は すごいよ」
容子「なんて言ってもさ 栞が生まれる 前から 愛してるんだもん 好きだとか なんでも いいけど 理由があって 愛してるんじゃないんだもん 生まれる前から 好きなんだもん すごいよ 親って…」
兼城「であるわけね」